The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-19] 左側頬粘膜ガン術後患者の摂食嚥下障害に対する長期的アプローチ

○吉川 峰加1 (1. 広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)

【目的】
 5年以上に渡り,左側頬粘膜ガン術後患者に対して,補綴学的治療ならびに摂食嚥下リハビリテーションを行い,安定した経口摂取を維持できている1例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 78歳,男性。約20年前に左側頬粘膜ガンに対して手術ならびに化学放射線療法を施術された。経過良好であったものの,2013年10月に放射線性下顎骨骨髄炎にて当院口腔外科を紹介受診した。翌2014年2月に,同骨髄炎のため左側下顎骨離断術と顎プレート再建術を施行された。開口時に右側への下顎偏位を認め,開口障害と咀嚼困難を生じたことから咀嚼・嚥下外来へ紹介された。上下顎部分床義歯を作製し,人工歯排列と床形態を工夫することで,少しずつ固形物摂取が可能となった。翌2015年2月に左側下顎骨周囲膿瘍が悪化し,左側下顎骨移植術(腸骨移植)を施行された。開口障害に加えて,下顎の後退や右側への偏位も悪化した。2016年4月には,前歯部での摂食困難や左下口唇の咬傷などの訴えが強くなり,下口唇を伸展させる目的で下顎スプリントを装着した。その後,他科入院等により四肢筋力が低下し,加齢も伴ってムセや咽頭部の異和感の訴えが増加した。ビデオ嚥下造影検査(VF)の実施に加えて,舌抵抗訓練や交互嚥下を指導し,舌接触補助装置も作製した。 元来,口腔清掃にあまり関心がなく,下顎偏位により口腔清掃が困難な上,化学放射線療法による口腔乾燥も顕著であった。したがって残存歯は次々にう蝕となり,保存補綴処置も間に合わない状態であった。歯科衛生士と共に口腔機能管理,唾液腺マッサージおよび舌可動域訓練も継続して行った。
【結果と考察】
 体調等により数ヵ月おきに嚥下障害の症状を訴え,2016年より定期的な嚥下障害スクリーニングやVFを実施しながら,栄養摂取状況や嚥下代償法について継続指導を行っている。 現在のところ誤嚥性肺炎への罹患はなく,経口摂取および体重も維持できている。同一の歯科衛生士が口腔衛生指導と摂食嚥下機能評価や訓練に参加し,口腔内の衛生状態も改善している。今後も頭頚部の形態的・機能的な変化ならびに加齢による摂食嚥下障害の変化等へ対応しつつ専門的な評価と介入を継続していく予定である。(COI開示:なし)