The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-25] 在宅での経口摂取継続を希望された進行性核上性麻痺患者の一例

○村田 尚道1 (1. 医療法人 湧泉会 ひまわり歯科)

【目的】

進行性核上性麻痺(以下PSP)は、病状の進行に伴い嚥下障害の出現頻度は増加し、胃瘻などの経管栄養が必要となる。今回、本人と家族の希望により、最後まで経口摂取を行った症例を経験したので報告する。なお、発表に際し、患者および家族に説明して同意を得ている。

【症例の概要と処置】
症例は、76歳の男性。主訴は、口腔衛生指導と飲み込みにくさであった。既往は、PSP、2型糖尿病、非持続性心室頻脈、外傷性クモ膜下血腫である。

現病歴:約1年前より動作緩慢が進行し、自分での歯磨きが難しくなってきた。その頃から通院も難しくなってきた。食事は全介助だが、口にスプーンを入れても上手く取り込めず、食事時間も長くなってきた。

・初診時所見:体幹の前傾姿勢あり、頸部伸展、流涎を認める。嚥下機能スクリーニングテスト結果は、 RSST:2回、MWST:4、 FT(ゼリー):4、FT(かゆ):3(舌背上に残留)、舌の振戦、動作緩慢あり。残存歯は28本、歯垢や歯石の付着を認めた。要介護度5、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱbであった。

・嚥下機能診断:舌機能低下(食塊形成・移送不全)を伴う摂食機能障害 FILS:Lv.8

・指導内容:食塊移送の改善を目標として、姿勢調整(体幹後傾45度)、食形態の調整(増粘食品の利用)、舌訓練(能動法)を指導した。また、口腔衛生指導時に舌訓練や咳嗽訓練を行った。

・経過:一時的に、食事時間は短縮されたが、約1ヶ月後に、むせ頻度増加の訴えあり。VEの所見で、嚥下反射遅延および咽頭残留、食塊形成不全を認めた。摂取量の低下に伴う、栄養・水分量の不足を認め、訪問医と管理栄養士へ情報提供した。その後、補液と栄養指導が行われた(FILS:Lv.6)。その後も経口摂取量の減少に伴い(FILS:Lv.5)、体重減少、活動量低下がみられた。初診から約4ヶ月後に状態悪化の連絡を受け、数日後に永眠となった。

【結果と考察】

PSPのような進行性疾患の場合、嚥下障害の改善が難しく、食環境や食内容指導による工夫が重要となる。本症例でも、嚥下障害の進行に伴い、食事姿勢や食形態の調整、補液や栄養管理の導入が行われた。家族からは、食べさせるのに困った時に相談できてよかったとお話を伺った。摂食機能療法や口腔健康管理を行うことで、本人や家族の最後まで経口摂取を継続したいとの気持ちに対応できたと考えられた。