The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-30] 嚥下恐怖を訴えた患者に対し嚥下障害の原因を明らかにし支援した1症例

○保母 妃美子1 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【緒言】病名が不確定であり摂食嚥下機能障害を訴えた患者に対し、医師、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーとともに支援した。摂食嚥下機能および栄養状態の変化を通じて症例を検討する。
【症例と経過】74歳女性。「突然飲み込めなくなった。飲み込むことが怖い。」ということを主訴に来院した。2週間前に突然嚥下困難となり、窒息への恐怖から流動食を少量ずつ摂取していた。20年前より抗うつ薬、抗精神薬を服用していた。複数の医療機関にかかり、それぞれ違う診断がつけられ、医療不信を抱いていた。初診時に声の震え、手、頭頚部の不随意運動がみられた。BMIは低体重を呈していた。ADLは自立し、認知機能は正常であった。口腔内は乾燥をみとめ、咬合力、舌圧検査は基準値を下回っていたが、舌口唇運動機能と咀嚼機能は基準値を満たしていた。嚥下造影検査では舌の不随意運動による咽頭移送不良をみとめ、5㏄のバリウム水、4gのゼリー摂取時、複数回嚥下がみられた。咽頭収縮力の低下がみられ、ゼリーは少量梨状窩に残留する様子が観察された。水分との交互嚥下で検査食の残留は除去された。喉頭侵入、誤嚥はみられなかった。意識嚥下と舌訓練を指導し、管理栄養士とともに、食形態の調整、補食提案を行った。また現在の嚥下機能評価について医科主治医に報告を行った。複数の医療機関での診断について医療ソーシャルワーカーが介入し、診断の整理がなされ、薬剤誘発性性振戦の存在が指摘された。主治医より薬剤の変更は難しいため対処療法を行うと回答があった。来院時は歯科衛生士とともに訓練の確認、再指導、口腔ケアを行った。初診3週間後、ペースト状であれば徐々に恐怖心なく嚥下可能となった。初診6週間後には舌圧が増加し、食事時間がやや短縮した。栄養評価を再度行い食形態の変更を行った。初診3ヶ月後、体重は増加傾向となった。嚥下造影検査では複数回嚥下の回数の減少がみられた。なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】摂食嚥下機能障害をきっかけに薬剤性の問題が明らかになった。診断名が明らかになることは、今後の摂食機能療法計画を立てる上で重要な役割を持つと考える。本症例は病名不確定な嚥下障害患者に支援を行い、摂食嚥下機能向上および栄養改善傾向となった。今後もさらなる改善に向け継続していく予定である。