The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-31] 多職種カンファレンスにて薬剤性嚥下障害を指摘した2例

○梅本 丈二1 (1. 福岡大学病院摂食嚥下センター)

【目的】

2020年度診療報酬改定にともない摂食嚥下支援加算が算定できるようになった。摂食嚥下機能回復の支援に係るチームが実施するカンファレンスは、多職種が参加することを要件としている。特に薬剤師が参加することによって薬剤性嚥下障害が指摘されやすくなった。原因となる薬剤は抗精神病薬や抗がん剤、筋弛緩薬などが挙げられ、これらの薬剤投与による錐体外路症状、せん妄、口腔内乾燥などの副作用が嚥下障害を誘発するとされる。今回、多職種カンファレンスにて薬剤性嚥下障害を疑った自験2例を報告する。

【症例1】

81歳の男性。当院消化器外科で盲腸癌と診断され、腹腔鏡下回盲部切除と再建術を受けた。術後1週間の欠食後、嚥下造影検査(VF)にて嚥下反射の惹起不全と咽頭残留と誤嚥を認め、経口摂取再開は困難と判断した。間接訓練を開始したが、覚醒状態は安定しなかった。持参薬のフルニトラゼパム3mg眠前が過剰投与と指摘され、中止した。1週間後のVF再評価にて嚥下障害の著明な改善がみられ、翌日よりきざみとろみ食摂取を再開した。

【症例2】

84歳の男性。当院消化器外科で胃癌と診断され、胃全摘と空腸再建を受けた。術後1か月絶食した後、VF結果をもとにゼリーを用いた直接訓練を開始した。同時期より日中は過鎮静となり、夜間覚醒し大声で叫ぶようになった。せん妄と判断され、リスペリドン0.5ml眠前から開始し、さらにリスペリドン0.5ml昼食後を追加した。直接訓練を3週間行ったが、嚥下機能はむしろ悪化した。訓練時の覚醒状態は安定せず、発熱後に直接訓練を中止した。リスペリドンを中止したところ、覚醒レベルととも嚥下機能は著明に改善したが、認知症の精神症状が顕在化し、嚥下訓練は拒否され、介入困難となった。

【結果と考察】

副作用が比較的少ないとされるベンゾジアゼピン系睡眠薬や非定型抗精神病薬リスペリドンでも、高用量での使用や高齢患者への使用は重度の嚥下障害を招くことがある。これらの薬剤を調整や中止することで摂食機能療法を円滑に進められる場合もあるが、一方で精神症状などに苦慮することがある。今後も多職種カンファレンスを有効利用し、薬剤性嚥下障害への対応に生かしたい。
(COI開示:なし)