The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-41] 歯科訪問診療の臨床と教育に役立つ学習支援の試み

○中川 量晴1 (1. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】

 要介護高齢者が増加するわが国では、多くの歯科医師・歯科衛生士が歯科訪問診療に関わっており、今後さらにその数が増加すると予想される。しかしながら、歯科訪問診療で遭遇する臨床的な疑問に対して、エビデンスを精査したうえで回答した教材は多くない。そこで、歯科医師・歯科衛生士の臨床決断と問題解決の支援を目的とし、学習支援教材の作成を試みた。

【方法】

 歯科訪問診療に関わるテーマ(12項目:咀嚼と嚥下・保存治療・補綴歯科治療・口腔外科・口腔インプラント・ターミナルケア・歯科衛生士・嚥下食レストラン・へき地、離島診療・歯列不正・オンライン診療・教育)を設定した。各テーマに精通した歯科医師、医師、看護師が臨床的な問題点(クリニカルクエスチョン、以下CQ)を審議し、それぞれ根拠となる論文を精査した後、CQとして成立する項目を確定した。論文を引用しながら推奨文および解説文を作成し、「エビデンスの強さ」を5段階で示した。各テーマにおいて、可能な限り具体的な事例を提示し、その経過と対応例および解説を付した。また根拠となる論文が存在しないテーマに関しては、臨床で想定されるQuestionsを作成し、それに対するAnswersを明示した。この手順で作成されたマニュアルをもとに歯科医師・歯科衛生士向けの教材を編集した。

【結果と考察】

 設定されたCQは全体で52個、Questionsは歯列不正が5個、オンライン診療が6個であった。「支持する論文がない」とした解説文は52個のうち16個であり、歯科訪問診療のエビデンスが不足していることが推察された。一方、残りの36個のCQと11個のQuestionsに対して、一定のエビデンスをもって解説文を作成することができた。さらに各テーマにそった事例提示では、該当するCQを明示して解説されていることから、歯科医師、歯科衛生士の歯科訪問診療における臨床決断の支援として、また学習支援として活用されると考えられる。なお本教材は、(一社)日本老年歯科医学会の監修のもと作成された。また平成30, 31年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「地域包括ケアシステムにおける効果的な訪問歯科診療の提供体制等の確立のための研究」の一部で遂行された。

COI開示:なし