[摂食P-03] 放射線治療中に嚥下障害を生じた下咽頭癌患者に終末期まで関与した一症例
【目的】咽頭癌は放射線治療が第一選択となることが多く、治療に伴う嚥下障害の発現は晩期障害としての報告が多い。今回、下咽頭癌患者において放射線治療中より急激に生じた嚥下障害に対し訓練を継続し、終末期まで関与した一症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】86歳男性、右視床梗塞の既往がある。X年7月嚥下機能の評価と訓練の依頼にて当院初診となる。前年12月右視床梗塞の発症時は嚥下障害の残存なく経過、X年4月に下咽頭癌発症し他院にて放射線治療施行(70Gy)、治療中に嚥下障害を生じ経口摂取困難と判断され同4月に胃瘻造設となる。経口摂取復帰に対し本人の強い希望あり紹介受診となった。ADL自立、BMI16.6、上下無歯顎で総義歯使用、口腔内に泡沫状の唾液の貯留と発声時の湿性嗄声を認めた。嚥下内視鏡検査にて声門閉鎖不全ならびに唾液誤嚥、嚥下造影検査にて食道入口部開大不全を認め急性放射線性障害による重度の嚥下障害と診断、DSS1で間接訓練レベルと判断した。当科介入直後より主治医と連携を図り、訪問STを手配し間接訓練を開始した。2か月後に肺転移発見されるも毎週の通院で訓練を継続し、均質なゼリー類を1g程度であれば誤嚥なく摂取が可能となった。3か月後には一口量の増量を期待してバルーン拡張法を開始、拡張直後であれば一口量の増量が可能となった。固形物の摂取希望が強かったが、誤嚥リスクが高いため噛み出し食べを提案した。徐々に全身機能、認知機能の低下を来し通院困難となり訓練中止、15か月後より訪問診療下での口腔機能管理に切り替えた。翌月緩和ケア病棟へ入院後も口腔衛生管理を継続したが、2か月の加療を経て死亡した。
【結果と考察】放射線治療を経て嚥下障害を生じた下咽頭癌患者に対し訓練を継続し一部経口摂取を再開した。介入当初はDSS1で間接訓練レベルだったが、患者のADLが自立していて強い訓練意欲があり、環境調整と重点的な訓練を行うことで、段階的に訓練レベルを引き上げて経口摂取品目を増やすことができ、誤嚥性肺炎の発症なく経過した。癌の転移による全身状態の悪化に伴い通院と訓練は困難となったが、訪問診療に切り替えて口腔衛生管理を行い終末期まで関与することが可能であった。
COI開示 なし 日本歯科大学臨床倫理委員会 NDUH-RINRI2020-21G
【症例の概要と処置】86歳男性、右視床梗塞の既往がある。X年7月嚥下機能の評価と訓練の依頼にて当院初診となる。前年12月右視床梗塞の発症時は嚥下障害の残存なく経過、X年4月に下咽頭癌発症し他院にて放射線治療施行(70Gy)、治療中に嚥下障害を生じ経口摂取困難と判断され同4月に胃瘻造設となる。経口摂取復帰に対し本人の強い希望あり紹介受診となった。ADL自立、BMI16.6、上下無歯顎で総義歯使用、口腔内に泡沫状の唾液の貯留と発声時の湿性嗄声を認めた。嚥下内視鏡検査にて声門閉鎖不全ならびに唾液誤嚥、嚥下造影検査にて食道入口部開大不全を認め急性放射線性障害による重度の嚥下障害と診断、DSS1で間接訓練レベルと判断した。当科介入直後より主治医と連携を図り、訪問STを手配し間接訓練を開始した。2か月後に肺転移発見されるも毎週の通院で訓練を継続し、均質なゼリー類を1g程度であれば誤嚥なく摂取が可能となった。3か月後には一口量の増量を期待してバルーン拡張法を開始、拡張直後であれば一口量の増量が可能となった。固形物の摂取希望が強かったが、誤嚥リスクが高いため噛み出し食べを提案した。徐々に全身機能、認知機能の低下を来し通院困難となり訓練中止、15か月後より訪問診療下での口腔機能管理に切り替えた。翌月緩和ケア病棟へ入院後も口腔衛生管理を継続したが、2か月の加療を経て死亡した。
【結果と考察】放射線治療を経て嚥下障害を生じた下咽頭癌患者に対し訓練を継続し一部経口摂取を再開した。介入当初はDSS1で間接訓練レベルだったが、患者のADLが自立していて強い訓練意欲があり、環境調整と重点的な訓練を行うことで、段階的に訓練レベルを引き上げて経口摂取品目を増やすことができ、誤嚥性肺炎の発症なく経過した。癌の転移による全身状態の悪化に伴い通院と訓練は困難となったが、訪問診療に切り替えて口腔衛生管理を行い終末期まで関与することが可能であった。
COI開示 なし 日本歯科大学臨床倫理委員会 NDUH-RINRI2020-21G