一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-04] 頭部外傷後の患者に対し在宅で摂食嚥下リハビリテーションを行い,経口摂取を確立できた症例

○吉見 佳那子1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【目的】
 重度嚥下障害患者は,回復期病院退院後も在宅や施設で摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)を継続することが望ましい。頭部外傷後遺症による嚥下障害で経腸栄養管理となった患者が,在宅での嚥下リハにより経口摂取を確立できた症例を報告する。
【症例の概要と処置】
 82歳男性。旅行中に転倒し,右急性硬膜下血腫,右前頭葉脳挫傷,右側頭葉脳挫傷を認め,同日に開頭血腫除去術を施行。その後回復期病院へ転院したが,ADL全介助,意識レベル不良で,入院中に誤嚥性肺炎を発症した。高次脳機能障害,重度嚥下障害を認め,経口摂取困難との診断で胃ろう造設の方針となったが,横行結腸穿刺リスクにより胃ろう造設ができなかった。その後,経鼻経管栄養管理のまま自宅退院となった。家族より嚥下リハの希望があり,退院1週間後に当科受診となった。
 初診時は朝夕は経腸栄養,昼のみペースト食やゼリーを摂取していた。退院直後から経鼻胃管を何度も自己抜去し,常にミトンを装着しなければならず,管理に難渋していた。初診時の嚥下機能評価では,口腔周囲の過緊張および舌根沈下,頚部後屈を認め,トロミ水とゼリーいずれも不顕性誤嚥を認めた。
【結果と考察】
 安全な経口摂取ができるよう,まずは食形態の調整やポジショニング指導を実施した。患者自身での間接訓練が困難であったため,家族に訓練方法を指導した。また主治医と連携をとり,経口摂取の状況に合わせ栄養管理も依頼した。退院2ヶ月半後には胃管を抜去し,経口摂取を確立した。ミトンも不要になり,ADLは徐々に向上した。その後一度肺炎を発症し入院したが,経口摂取は継続し,退院後もほぼ嚥下機能の低下はなく経過した。現在は主食は軟飯,副食は一口大程度の咀嚼を要する形態も誤嚥なく摂取できている。
 生活期では,患者の状態や介護環境,介入のタイミングが嚥下リハの効果や目標に大きく影響する。本症例は経口摂取確立は困難と思われたが,退院直後からの介入と,食形態の調整や環境設定の詳細な評価や指導が,円滑な嚥下リハにつながった。さらに主治医との嚥下リハの目標共有により,肺炎発症後も経口摂取を継続し,機能低下を防ぐことができた。検査では毎回様々な手作り食を試し,訓練食ではなく家族と同じ食事が食べられるようになる,という喜びや食べる楽しみを共有している。患者,介護者に寄り添い,皆で生活を支援することが重要であると考える。