The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-05] 多職種連携で食支援を行い経口摂取再開となった神経筋疾患の症例

○古屋 裕康1,2 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科)

【目的】

 神経筋疾患の摂食嚥下障害は経時的に増悪し、誤嚥性肺炎や窒息、栄養障害などを引き起こす。誤嚥性肺炎を契機に経鼻経管となり経口困難となった後、多職種で食支援を行い経口再開となった症例を通じて多職種連携の意義を考察することを目的とした。

【症例の概要と処置】

 77歳女性。口から食べたいことを主訴に在宅への訪問依頼があった。既往に筋ジストロフィーがあり、3年前に上記診断を受けてから徐々に嚥下障害進行し、3年間で10kg以上の体重減少を認めていた。誤嚥性肺炎で入院となり、経口困難との診断で経鼻経管となり在宅療養となった。初診時Barthel Index(BI):45点, BMI:14.8, Alb:3.1g/dl, 摂食状況:FILS 1 (経口摂取なし)だった。口腔所見としては残存歯数21本であり、部分床義歯を使用して片側性咬合であった。
 嚥下内視鏡検査での嚥下機能評価(Hyodoスコア9点, 誤嚥リスク高度)に基づき、初診より6ヶ月間は、間接訓練と口腔環境改善を中心に行った。また、この期間中に胃瘻造設を受けた。看護師、作業療法士と連携し、他職種訪問時にも嚥下訓練を依頼した。また自主訓練メニューを作成し、徐々に直接訓練の頻度を増やした。初診より6ヶ月経過時点で体重4kg増加、BMI :16.6、Alb:3.7g/dl、となり栄養改善を認めた。嚥下機能再評価を行い、機能改善を認めた(Hyodoスコア2点)ため経口摂取量を増加していくこととした。緊急事態宣言期間中(初診より9ヶ月経過:2020年4月~5月)はオンライン診療を利用した(オンライン診療回数:4回)。
【結果と考察】
 初診より1年経過時点でADL改善(BI:60点)、経口摂取量1600kcal/日, BMI:19.7、Alb:4.1g/dl、となり、内科主治医、看護師など多職種と協議の結果、3食経口摂取することとなった(FILS 6:3食経口摂取が主体、不足分のみ代替栄養)。
 本症例は疾患の進行とともに嚥下障害が再発する可能性があり今後も経管栄養は併用していくことが望ましいと考えるが、高齢、進行性筋疾患、誤嚥性肺炎の既往があっても、経口摂取再開となった。経管栄養による栄養改善、適切なタイミングでの嚥下機能再評価、多職種連携での食支援、ADL改善などが経口推進に繋がったと思われる。