一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-06] 摂食嚥下リハビリテーション介入によってサルコぺニアの進行予防が可能であった症例

○新藤 広基1 (1. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科)

【目的】
 サルコぺニアと嚥下障害の関連についてはこれまでも様々な報告がなされている。今回、摂食嚥下リハビリテーション介入が重度嚥下障害患者のサルコぺニアの進行予防に有効であった症例を経験し、一定の知見を得た為、報告する。
【症例の概要と処置】
 72歳、男性。脳梗塞(両側基底核、右視床)、高血圧、糖尿病、腰部脊柱管狭窄症、白内障の既往あり。1年前より職場での生活を開始し、独居となり徐々に活動量が低下していた。3、4か月前から嚥下困難感を自覚し、食事時間40分程度だったものが2時間かけて軟飯、軟菜を摂取するようになり主治医より当科外来に紹介受診となった。歩行速度と握力の低下を認め、筋肉量(SMI)は7.0kg/m2と維持されているものの、BMIは17.8を示し低栄養であった。口腔状態はアイヒナ―の分類B1、口腔機能評価では口腔乾燥、舌口唇運動機能低下をきたしていた。嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査による嚥下機能評価では右側の咽頭壁の運動不全および声門閉鎖不全、嚥下反射惹起の遅延を認め、咽頭収縮力の低下、C4-C7領域の骨棘による喉頭蓋の反転不全、食道入口部の開大不全によって右側梨状窩への咽頭残留および嚥下後の不顕性誤嚥をきたした。息こらえ嚥下と交互嚥下、右側頸部回旋嚥下が有効であったため、代償嚥下の実施と間接訓練としてプッシング訓練、前舌保持嚥下訓練と嚥下おでこ体操の実施、栄養指導としてタンパク質摂取の促進を行った。主治医には、糖尿病に関し栄養剤処方の可否を対診し、ケアマネジャーには廃用予防のため理学療法士の介入と、間接訓練実施のため言語聴覚士の介入を依頼した。
【結果と考察】
 毎月評価を継続し、糖尿病の改善に伴い高栄養食品を追加してBMIは18.4、SMIは7.5まで増加した。活動量も増加し、食形態も維持して食事時間も改善した。仕事での会食にも参加するなどQOLを維持することができた。本症例は既往として脳梗塞、解剖学的問題として頸椎の骨棘の存在があり、サルコぺニアの進行によって重度の嚥下障害が顕在化したが、全身状態が重症化する前の段階で摂食嚥下リハビリテーション介入を行うことが栄養改善およびサルコぺニアの進行予防につながり、QOLの維持に重要であると考えられた。(COI開示:なし)