The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-07] 下顎骨病的骨折後治癒不全にて長期経過観察中に摂食嚥下障害をきたした一症例

○岩田 雅裕1,2 (1. サンズデンタルクリニック、2. 宇治徳洲会病院口腔外科)

【目的】下顎骨の重度萎縮により病的骨折を引き起こすと整復固定することに難渋し、まれに骨折部位は治癒せず摂食に支障をきたすことがある。今回われわれは 下顎骨病的骨折後治癒不全にて長期経過観察中に摂食嚥下障害をきたし、VE検査後義歯装着、摂食機能療法を実施し改善した一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】72歳、男性。食事時咽ることが多くなり、嚥下機能の精査を主訴に2019年5月来院した。既往歴に悪性リンパ腫(1998年)があった。現病歴は2008年5月、右側下顎臼歯部に軽度咬合時痛を認め某病院受診。画像にて下顎骨両側臼歯部の重度の萎縮、右側臼歯部に骨折線を認めた。2008年7月右側下顎臼歯部の観血的整復固定術、2010年10月左側下顎臼歯部の顎骨造成術を施行した。その後経過良好で下顎義歯装着したものの、軽度の右側臼歯部骨片の動揺は認めた。2013年10月、経過観察目的で当科初診した。骨片の動揺は認めるも増大はせず、患者の希望で右側下顎の再手術、下顎の総義歯作製は行わなかった。下顎は無歯顎で普通食を摂取していた。2019年4月ごろより食事時咽るようになり来院された。口腔内所見は下顎無歯顎で、粘膜に腫脹、発赤、瘻孔は認められず正常であった。
2019年11月上顎義歯作製、2020年1月VE検査を実施。検査の結果、摂食前の所見としては、両側梨状窩に泡沫状の唾液が貯留していた。ゼリー摂取後には、誤嚥なく嚥下可能であったが、嚥下後両側梨状窩にごく少量の残留は認めた。食塊形成、送り込みには下顎義歯装着が不可欠と考え、患者の承諾を得て、右側臼歯部の咬合圧を緩和した形で総義歯を作製した。それとともに、管理栄養士による咬合圧があまりかからない、摂食しやすい食形態の指導、言語聴覚士、歯科衛生士による直接・間接嚥下訓練、誤嚥性肺炎予防のための口腔衛生指導を定期的に行った。現在、下顎義歯も装着され、右側下顎骨部にも著変はない。誤嚥もなく経過良好である。なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【結果と考察】本症例は下顎骨病的骨折治癒不良により長期にわたり下顎に総義歯を装着できず、咀嚼嚥下の一連の運動パターンが崩れていたことと、加齢により嚥下機能の低下が推察される。不完全な形での下顎総義歯装着ではあるが、多職種の連携が嚥下機能改善に繋がったものと考えられる。