一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-08] 家族による虐待を疑われた在宅要介護高齢患者に対する多職種連携による誤嚥性肺炎の予防の取り組み

○礒田 友子1,2 (1. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科、2. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【目的】
 在宅要介護高齢者家族の食事に関する介護負担が大きいことは報告されている。今回、家族による虐待を疑われた在宅要介護高齢患者の食事に関する支援を通して、地域包括ケアの一員として関わることの重要性を再認識したので報告する。
【症例の概要と処置】
 87歳、男性。8年前に肺癌を手術し、その後抑うつ状態で在宅療養していた。初診3ヵ月前に誤嚥性肺炎で入院し、退院後は介護老人福祉施設に入居したが、同居家族(娘2人)は患者を在宅復帰させる目的で食支援を求めて当院を受診した。ADLは部分介助、MMSE1点であった。摂食状況は、嚥下調整食コード3(ムース食)を一部介助で摂取していた。口腔内所見は、残存歯、義歯ともに著しく不衛生であり、重度う蝕症、義歯の不適合を認めた。初回の嚥下機能評価として、嚥下造影検査上ではコード4が摂取可能と判断したが、認知症に伴う食行動の問題を加味した指導が必要な状態であった。その他問題点として、顕著な唾液誤嚥があった。
 その後、患者は家族からの身体的虐待を受けている可能性があり、地域包括支援センターが介入しているとの情報を得た。患者の在宅復帰に際し、サービス担当者会議を開催し、虐待防止を目的に家族支援の重要性を関連職種で確認した。家族は誤嚥性肺炎再発への不安が強かったことから、食事提供や口腔ケアの方法を家族に指導するとともに、ケアマネジャー、在宅主治医、訪問看護、訪問リハビリ、通所先(デイサービス、ショートステイ)に多職種連携のためのICTツールとして開発されたメディカルケアステーションを活用して情報を共有した。在宅復帰後に、患者の体重は増加傾向に転じ、口腔衛生状態も改善した。排痰が可能になり、唾液誤嚥が減少した。
【結果と考察】
 同居家族は人格的な問題は認められず、虐待は特殊な家族や人での話ではなく、誰でも虐待の当事者になり得ると考えさせられた症例であった。本症例は虐待防止を目的に関係職種がより連携を意識したゆえ、誤嚥性肺炎の予防に寄与できたと考えられた。在宅要介護高齢者の摂食嚥下リハビリテーションは、生活に即した指導が重要であり、それは家族の介護力を考慮することでもある。他職種と連携することによって、生活支援を達成することに心がける必要があると考えられた。
 なお、本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。(COI開示:なし)