The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

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摂食機能療法専門歯科医師審査/更新ポスター

[摂食P-09] ワレンベルグ症候群発症後、長期間非経口摂取だった患者に対して摂食嚥下リハビリテーションを行った一例

○小川 奈美1 (1. 坂上デンタルオフィス)

【目的】ワレンベルグ症候群は重度の摂食嚥下障害を呈し、摂食嚥下リハビリテーションに難渋することがある。また経口摂取不可の診断後、適切な摂食嚥下機能評価やリハビリテーションが実施されずに禁食期間が続いてしまうが多い。今回、ワレンベルグ症候群発症後に5年間非経口摂取だった患者に摂食嚥下リハビリテーションを行い、お楽しみでの経口摂取を開始することができたので報告する。

【症例の概要と処置】初診時71歳女性。右側延髄外側症候群による摂食嚥下障害に対してリハビリテーションを行うも改善せず、誤嚥性肺炎を3回発症。経口摂取不可と診断され、胃瘻造設し在宅復帰された。5年間禁食だったが、喫茶店にいきたいという希望を諦められず当院受診となった。初診時の嚥下内視鏡検査(VE)では、咽頭での泡状の唾液貯留と唾液誤嚥を認めた。鼻咽腔閉鎖不良、嚥下反射惹起困難、喉頭挙上不良、食道入口部の開大不良を認め、ゼリーやとろみ茶は梨状窩に残留後に不顕性誤嚥を起こしていた。まずは言語聴覚士と連携し間接訓練(アイスマッサージ、ブローイング、開口訓練、バルーン訓練など)を開始した。またBMIは16.0と低栄養を認めたため、管理栄養士と連携し適切な栄養量を算出し実施した。3か月後には唾液誤嚥がなくなり、頚部右回旋であればプリンやゼリーの摂取が可能となった。訓練は順調に進んでおり、バルーン拡張量も7ccとなったが、介入11か月まではVEでの改善を認めなかった。バルーン拡張量が10ccに達した介入14か月後には、頚部回旋せずにコード2-1まで摂取可能となり、BMIは19.3に改善した。

【結果と考察】介入17か月後の喫茶店での飲食を想定したVEでは、ケーキととろみ無しの飲み物が誤嚥なく食道通過可能だった。BMIは20.0となり栄養状態の改善を認めた。最終的には、本人の希望である喫茶店での飲食を達成することができた。本症例は、ワレンベルグ症候群による球麻痺と長期間の非経口摂取による口腔嚥下機能の廃用を認めた症例であった。訓練自体は順調に進んでいたが、VEでは思うような改善を認めず苦慮した期間があった。諦めずに訓練を継続した結果、栄養改善とともに本人の希望を達成することができた。今後も多職種との連携を強化し、食形態アップや食事としての経口摂取を目指して支援を継続していきたい。本発表は、患者の同意を得て行った。COI開示なし