一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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[P一般-084] プロポリスの高齢者口腔細菌叢に与える影響

○並河 大裕1、眞砂 彩子1、南部 隆之2、沖永 敏則2、髙橋 一也1 (1. 大阪歯科大学高齢者歯科学講座、2. 大阪歯科大学細菌学講座)

【研究】

プロポリスの高齢者口腔細菌叢に与える影響

○並河 大裕¹⁾,真砂 彩子¹⁾,南部 隆之²⁾,沖永 敏則²⁾,高橋 一也¹⁾

1) 大阪歯科大学 高齢者歯科学講座 2) 大阪歯科大学 細菌学講座

【目的】

口腔環境の改善は、歯科疾患のみならず全身的疾患の予防に関与していることが報告されている。我々は、細菌学的アプローチとして、口腔細菌叢の改善につながる天然物質に注目し、研究展開をしている。天然の抗菌物質であるプロポリスは、健康食品や歯周病の民間薬などに用いられ、様々な効果が報告されている。そこで本研究では、プロポリスの口腔細菌叢へ与える影響について次世代シーケンサーを用いて検証した。

【方法】

大阪歯科大学附属病院高齢者歯科を受診した患者3名(男性2名、女性1名)の4 mm以上の歯周ポケットからペリオペーパーにて歯肉溝滲出液を採取し、SHI培地で培養して口腔細菌叢サンプルとした。サンプルにエタノール抽出プロポリス(EEP; 0,50,100 µg/mL ;(株)山田養蜂場より提供)を添加し、嫌気条件下で24時間37℃振盪培養た。DNA抽出後、PCRにより増幅した16S rRNAの塩基配列を次世代シーケンサーMiseqで解読し、QIIME2を用いた統計解析により多様性と各細菌種の量的変化を評価した。また、歯周病細菌については、培養液の吸光度(OD)、固形培地上でのコロニー形成単位(CFU)により増殖能を測定した。

【結果と考察】

口腔細菌叢に対するEEPの影響を解析したところ、菌叢の割合や多様性に有意な変化は見られなかった。また、歯周病細菌P.gingvalisF.nucleatumに対するEEPの影響を解析したところ、EEPは用量依存的にP.gingvalisの増殖を阻害していた。一方、F.nucleatumの増殖に対しては、大きな影響は見られなかった。さらに、P.gingvalisのCFU数は100 µg/mLのEEPにより減少したが、F.nucleatumのCFU数の減少は観察されなかった。以上の結果から、EEPは細菌叢のバランスを大きく変えることなく、歯周病細菌P.gingvalis に対して顕著な増殖抑制を示すことが示唆された。

(大阪歯科大学 倫理審査委員会承認番号:大歯医倫 第110965号)