一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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[P一般-086] 初診・再初診者に対する基本チェックリストを用いたフレイル評価と口腔機能精密検査を実施した状況報告

○柾木 雄一1、島田 星羅1、杉崎 拓也1、續木 アナスタシア1、井上 高暢1,2、森 由香里1、小瀬木 美香1、若杉 好彦1、櫻井 薫1、小林 健一郎1 (1. こばやし歯科クリニック、2. デジタルハリウッド大学院)

【目的】

 口腔機能低下症は身体的フレイル,サルコペニア,低栄養の発生に大きく関連しているといわれ,早期予防,治療及び機能維持が高齢者のQOL向上につながることが期待されている。当院では口腔機能低下症該当者の診断も力を入れている。加えて管理栄養士が在籍しており,口腔領域からの低栄養状態の予防を目的とした体制を構築し,口腔機能低下症と栄養指導の新たな形を確立しようとしている。その一つの試みとして,通常の問診票に加え『基本チェックリスト』を導入しており,基本チェックリストの総合点数からフレイル,プレフレイル該当者の選別を行っている。今回,基本チェックリストから口腔機能精密検査へと至った状況を報告する。



【方法】

 2020年1月より来院された50歳以上の初診・再初診者に対し,『基本チェックリスト』に回答してもらった。総合点数(0≦剛健≦3、4 ≦プレフレイル≦7、8≦フレイル≦25)からフレイル及びプレフレイル該当者を選別した。その内,口腔乾燥やむせ込みといった症状があり口腔機能低下症が疑われた受診者に対し,口腔機能精密検査を実施した。



【結果及び考察】

 2020年1月から2020年12月時点で184名の該当者がいた。その内,フレイル・プレフレイル該当者が半数以上にのぼり,口腔機能低下症疑いとなり口腔機能精密検査に至った実績としてはフレイル・プレフレイル該当者の内, 3割に当たる受診者に実施があった。
 
 本期間において口腔機能精密検査に至った受診者が多くなかった要因としては,初診・再初診者の主訴として急性疼痛及び義歯の不適合を訴えとする場合がほとんどであり,来院当日に検査を実施できず,また主訴が改善された後に来院されなくなったことが挙げられる。
 
 2018年4月に口腔機能低下症が新病名として認められ,徐々に診断や管理を実施する医療機関が増えてきてはいるが,未だ一般的な疾病としての社会認識が不十分であることが本期間中においても感じられた。
 
 すでに超高齢社会を迎えている本邦において,より多くの高齢者のQOL向上を達成するために,無自覚の口腔機能低下症有病者群に対してもアプローチを行うためのさらなる方策を考えていく必要があると考える。



(COI開示:無)