一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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症例・施設

[P一般-082] Aripiprazole内服後に咽頭分泌物増加を認めた口腔異常感を伴う摂食嚥下障害患者の1例

○美久月 瑠宇1、西崎 仁美1、辰野 雄一1、杉山 俊太郎1、田中 洋平2、林 恵美1、原 豪志2、飯田 貴俊1、森本 佳成1 (1. 神奈川歯科大学 大学院歯学研究科 全身管理医歯学講座 全身管理高齢者歯科学分野、2. 神奈川歯科大学附属病院 全身管理高齢者歯科)

目的)

口腔異常感症、舌痛症といったいわゆる歯科心身症の患者は唾液や水分などの「飲み込みにくさ」といった摂食嚥下障害を訴えることも少なくない。歯科心身症の治療の中では内服治療の1つとしてDopamine Partial Agonist であるaripiprazoleを少量から漸増し改善を認めるケースがある。今回、内服治療を開始し治療経過を診ていく中で内視鏡下での摂食嚥下評価を行い有用であった症例を経験したので報告する。

症例概要)

患者は70代男性。主訴は飲み込みにくい。口の中につぶつぶがある。既往は脳梗塞後遺症、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症。常用薬はCilostazol、Azilsartan、Rosuvastain、Lansoprazole、Topiroxostatである。現病歴としては、X-7年12月に舌を咬傷し当院口腔外科緊急入院。主訴のため当科へ院内紹介受診となった。「飲み込みにくさ」などの摂食嚥下障害に対して内視鏡下での摂食嚥下評価を当科で行ったところ、顕著な異常は認めず、「口の中につぶつぶがある」といった愁訴は一進一退を繰り返していた。他大学医学部精神科での通院治療も行ったが口腔異常感の症状の改善もなかった。X-1年12月に当院専門外来で口腔異常感症に対する治療のためaripiprazoleの処方による内服治療を開始した。X年2月には依然、飲み込みにくさなどの摂食嚥下障害の訴えも併発していることから、内視鏡下での摂食嚥下評価を当科で行ったところ、安静時咽頭分泌物の著しい増加を認めた。

結果と考察)
高齢者の患者では多数の不定愁訴が混在し、一見不定愁訴と見える様な臨床症状を丁寧に拾い上げることは容易ではない。Dopamine Partial AgonistであるAripiprazoleの内服後より、口腔異常感の症状の改善傾向とは別に「飲み込みにくさ」の訴えを述べていた。嚥下内視鏡下での摂食嚥下評価を行った際、安静時咽頭分泌物の著しい増加を認めた。患者は既往に脳梗塞後後遺症があり舌運動障害を認めた。唾液の咽頭部へのスムーズな送り込みといった嚥下運動も鈍く、咽頭部の分泌物増加と咽頭部知覚低下のために誤嚥を引き起こした可能性が示唆された。比較的に高齢者へのリスクが低いとされている薬剤についても注意を払い、摂食嚥下評価を行うことで誤嚥性肺炎へのリスクマネージメントが必要と考える。