[P一般-055] 咬合不正により引き起こされる認知症誘発物質の発現増加について
【目的】
近年,オーラルフレイルと認知症発症との関連性が注目され,口腔機能の低下や異常を防ぐことで認知症の発症予防へとつながることが提唱されている.しかしながら,咬合性外傷やブラキシズムによる咬合不正と認知症発症との関連性については未だ明確な実証はない.さらにこの作用機序に関してほとんど不明である.このことから今回,咬合不正が認知能にどの様な作用を及ぼすか,作用機序を明らかにすることを目的とした.
【材料及び方法】
実験を行うにあたり,若年者を想定した2ヵ月齢のマウスと高齢者を想定した12ヵ月齢マウスを用いて,上顎右側臼歯部の咬合面にワイヤーを接着し,過剰咬合による咬合不正モデルマウス作成した.その後,これらマウスを無処置群、咬合不正1週間後、咬合不正4週間後群にわけ、8方向性放射状迷路試験と新奇物質探索試験による行動学的認知機能の評価を行った.同時に,各群の脳切片を用いて認知症の誘発分子の発現と局在を免疫染色法により調べた.さらに,認知機能を司る海馬部分を回収し定量性RT-PCRを用いてこれら分子の発現の変化を調べた.
【結果と考察】
若年者を想定した2ヵ月齢マウスにおいて,咬合不正により認知機能が高齢者を想定した12ヵ月齢マウスと同レベルにまで有意に低下した.同時に,2ヵ月齢マウスでは咬合不正によって海馬領域の認知症誘発物質であるTauタンパク質の有意な発現増加がみられた.また,12ヵ月齢マウスは、加齢による認知機能の低下や海馬領域のAmyloidβやTauタンパク質の増加が元々認められ,咬合不正による変化はあまり認められなかった.以上の結果より,高齢者を想定した12ヵ月齢マウスは元々認知機能の低下がみられ咬合不正による有意差はあまり認められなかったが, 若年者を想定した2ヵ月齢マウスにおいて咬合不正により認知症誘発物質の発現が有意に増加し、認知機能の低下が認められた.従って,若年者において咬合不正が認知機能を低下させる1つの要因となり得る可能性があり,緊密な咬合状態を維持することで認知機能低下の予防につながると考えられた。
(COI開示:なし)
福岡歯科大学・福岡医療短期大学・福岡看護大学動物実験委員会 19006
近年,オーラルフレイルと認知症発症との関連性が注目され,口腔機能の低下や異常を防ぐことで認知症の発症予防へとつながることが提唱されている.しかしながら,咬合性外傷やブラキシズムによる咬合不正と認知症発症との関連性については未だ明確な実証はない.さらにこの作用機序に関してほとんど不明である.このことから今回,咬合不正が認知能にどの様な作用を及ぼすか,作用機序を明らかにすることを目的とした.
【材料及び方法】
実験を行うにあたり,若年者を想定した2ヵ月齢のマウスと高齢者を想定した12ヵ月齢マウスを用いて,上顎右側臼歯部の咬合面にワイヤーを接着し,過剰咬合による咬合不正モデルマウス作成した.その後,これらマウスを無処置群、咬合不正1週間後、咬合不正4週間後群にわけ、8方向性放射状迷路試験と新奇物質探索試験による行動学的認知機能の評価を行った.同時に,各群の脳切片を用いて認知症の誘発分子の発現と局在を免疫染色法により調べた.さらに,認知機能を司る海馬部分を回収し定量性RT-PCRを用いてこれら分子の発現の変化を調べた.
【結果と考察】
若年者を想定した2ヵ月齢マウスにおいて,咬合不正により認知機能が高齢者を想定した12ヵ月齢マウスと同レベルにまで有意に低下した.同時に,2ヵ月齢マウスでは咬合不正によって海馬領域の認知症誘発物質であるTauタンパク質の有意な発現増加がみられた.また,12ヵ月齢マウスは、加齢による認知機能の低下や海馬領域のAmyloidβやTauタンパク質の増加が元々認められ,咬合不正による変化はあまり認められなかった.以上の結果より,高齢者を想定した12ヵ月齢マウスは元々認知機能の低下がみられ咬合不正による有意差はあまり認められなかったが, 若年者を想定した2ヵ月齢マウスにおいて咬合不正により認知症誘発物質の発現が有意に増加し、認知機能の低下が認められた.従って,若年者において咬合不正が認知機能を低下させる1つの要因となり得る可能性があり,緊密な咬合状態を維持することで認知機能低下の予防につながると考えられた。
(COI開示:なし)
福岡歯科大学・福岡医療短期大学・福岡看護大学動物実験委員会 19006