一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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加齢変化・基礎研究

[P一般-057] 高濃度BP製剤が抜歯窩硬軟組織の治癒に与える影響

○小堤 涼平1、黒嶋 伸一郎2、佐々木 宗輝2 (1. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔インプラント学分野、2. 長崎大学生命医科学域口腔インプラント学分野)

【目的】 
 ビスホスホネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)は,高齢患者への歯科治療時に大きな問題となるが,報告から20年近く経過しても,その病因は不明である.そこで本研究の目的は,BRONJのリスク因子である高濃度BP製剤がマウス抜歯窩の治癒に与える影響を検索することにある。
【方法】
 雌性C57BL/6Jマウスを4群(n = 7/各群)に分類した。BRONJのハイリスク因子であるBP製剤〔ゾレドロネート(ZA)〕の濃度を変えて7週間投与した(低濃度:ZA-L,中濃度:ZA-M,高濃度:ZA-H,生理食塩水投与:VC)。投与開始3週間後に両側第一大臼歯を抜歯し,4週間後に屠殺して上顎骨,長管骨,血清を採取した。マイクロCT,抜歯部切片のヘマトキシリン・エオジン染色,酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ染色とELISAから,長管骨と抜歯窩の骨構造解析,抜歯部硬軟組織治癒解析,TRAP陽性細胞分布解析,ならびに,血中TRAcP5bレベルの定量解析をそれぞれ行った。
【結果と考察】 
 ZA投与群では,その濃度に関わらず脛骨骨量を増加させたことから,本研究で使用したZAは薬剤効果を示すことが確認された。次いで,抜歯窩治癒状態の解析を行ったところ,全ての群で上皮の閉鎖が認められ,治癒状態は同程度だった。ところが硬組織治癒状態を詳細に解析すると,ZA-MとZA-Hでは骨梁数が有意に減少し,ZA-Hでは骨梁間隙量が有意に増加していることが,また,ZA投与群は濃度依存的に空の骨小空数と壊死骨を有意に増加させていることが分かり,ZAの投与濃度依存性に硬組織治癒の悪化が惹起されていることが明らかとなった。そこでなぜZAの濃度が高くなると骨性治癒が悪化するのかを検討するためにTRAP陽性細胞に着目してその分布を解析したところ,ZA投与群ではVCには認められないTRAP陽性単核細胞と遊離破骨細胞がZAの濃度依存性に有意に増加し,この増加は血中TRAcP5bレベルと相関していることが分かった。 以上から,高濃度ZAの投与は軟組織治癒ではなく抜歯部骨性治癒に対するリスク因子であり,ZAの濃度依存性に起こる抜歯部のTRAP陽性細胞数増加が,骨性治癒の悪化に関与している可能性が考えられた。
(COI開示:なし)
(長崎大学 動物実験委員会承認番号 1708241404-3)