The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

一般演題(ポスター)

e-ポスター抄録 » 一般演題(ポスター)

加齢変化・基礎研究

[P一般-058] 要介護高齢者の食欲と嗅覚,味覚,薬剤に関する調査

○金子 信子1,2、野原 幹司3、有川 英里3、山口 高秀2、光山 誠4、阪井  丘芳3 (1. 学校法人平成医療学園なにわ歯科衛生専門学校、2. 医療法人おひさま会 おひさまクリニック、3. 大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室、4. 医療法人敬英会)

【緒言】
 我々は要介護高齢者の低栄養予防を目的として,嗅覚に関連した研究をしている.これまでの研究において,要介護高齢者の嗅覚は健常成人および自立高齢者と比較して明らかに低下していることを報告した.また,嗅覚と同じ化学受容感覚で相互作用のある味覚を自立高齢者と比較したところ,明らかな低下は認めなかったことも報告した.これらの化学受容感覚である嗅覚および味覚が食欲と関連しているという研究報告は多くみられ,広く知られている.しかしながらこれらの研究報告は健常成人の報告であり,要介護高齢者の場合は味覚がある程度維持されていたとしても,嗅覚の低下かつ慢性疾患を複数抱えて多剤服用に陥りやすいため異なる可能性がある.そこで今回は要介護高齢者の嗅覚,味覚,食欲,服薬数を調査し,食欲との関連を検討することにした.なお,本研究の開示すべきCOIはなく,倫理は大阪大学大学院歯学研究科・歯学部および歯学部附属病院倫理審査委員会(承認番号:H29‐E24-1)である.
【方法】
 対象者は要介護高齢者72名(86.1±6.9歳)とした.調査項目は嗅覚検査OSIT-J(点,基準値9/12点以上),味覚検査ソルセイブ(mg/cm²,基準値0.6 mg/cm²以下),食欲CNAQ(点,基準値29/40点以上),服薬数(剤,確認方法:処方薬剤情報)の4項目である.要介護高齢者の食欲と嗅覚・味覚・服薬数との関連を検討するため,目的変数をCNAQ,説明変数をOSIT-J,ソルセイブ,服薬数として重回帰分析をおこなった.
【結果と考察】
 調査項目それぞれの平均はOSIT-J(点)3.2±2.5,ソルセイブ(mg/cm²)0.8±0.3,CNAQ(点)28.4±3.7,服薬数(剤)5.7±3.2となった.調査項目における重回帰分析の結果は相関係数0.66,CNAQと関連を認めたのはソルセイブ(p<0.05)と服薬数(p<0.01)となった.
 今回の調査において要介護高齢者の嗅覚および味覚は機能低下し,食欲においても基準値をわずかに下回った.さらに食欲は嗅覚よりも味覚と関連し,服薬数との関連も認めた.このことから要介護高齢者の食欲はやや低下しており,嗅覚より味覚が関連し,服薬数が多くなると低下する可能性が示唆された.