一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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加齢変化・基礎研究

[P一般-060] ランソプラゾールおよびゾレドロン酸投与マウスの抜歯窩解析

○吉岡 玲奈1、峯 裕一1、和智 貴紀2、二川 浩樹3、村山 長1 (1. 広島大学医系科学研究科歯学分野医療システム工学、2. 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座クラウンブリッジ補綴学、3. 広島大学大学院医系科学研究科歯学分野口腔生物工学)

【目的】

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は安全性が高い薬剤であるが,長期投与による大腿骨頚部骨折リスクの上昇などが報告されている。2017年にデンマークで実施された大規模コフォート研究において外科的処置の適応となった重症ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(BRONJ)患者において前年のPPI服用歴が指摘された。本研究ではマウスにおけるランソプラゾールとゾレドロン酸投与による抜歯窩治癒への影響ついて検討した。

【方法】

 6週齢雌のC57BL/6Jマウスに,ゾレドロン酸を投与し上顎第一大臼歯を抜歯することでBRONJ様の病態を示すモデルマウスを作製した。薬剤投与条件は,生理食塩水投与群,ゾレドロン酸/生理食塩水投与群,生理食塩水/ランソプラゾール投与群,ゾレドロン酸/ランソプラゾール投与群の4群とした。ゾレドロン酸を尾静脈から,デキサメタゾンを腹腔から3週間投与した.ランソプラゾール投与群に対しては1日1回、3日間の投与ののち2日間期間を空けるサイクルを3週間繰り返した.各群は実験開始1週間後に上顎第一大臼歯を抜歯し,さらに2週間の投薬後,上顎骨および血清を採取した。上顎骨はマイクロCT(SkyScan)を用いて撮影し、抜歯窩のBV/TV(骨密度),Tb.Sp(骨梁間距離)およびTb.N(骨梁数)を測定,比較を行った。また,血清中のtartrate-resistant acid phosphatase 5b (TRAP5b)の活性を測定した。

【結果と考察】

 生理食塩水投与群と比較して他3群では,BV/TVの値が有意に低い値を示した(ANOVA: p<0.01)。一方,Tb.spの値は有意に高い値を示し(p<0.01),Tb.Nはゾレドロン酸/ランソプラゾール投与群のみ有意に低い値を示した(p<0.01)。ELISA法によるTRAP5b活性の測定の結果,生理食塩水投与群と比較してゾレドロン酸/生理食塩水投与群およびゾレドロン酸/PPI投与群では,TRAP5b活性が有意に低い値を示した(p<0.01)。ゾレドロン酸およびランソプラゾールは,それぞれ抜歯窩治癒遅延に寄与している可能性が認められた。本研究よりビスフォスフォネート製剤服用患者においてPPIの服用は,侵襲的歯科治療における骨新生遅延を引き起こす可能性が示唆された。

COI開示:なし
広島大学動物実験委員会承認番号:A18-106