一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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実態調査

[P一般-051] 都市部在住認知症高齢者に対する訪問口腔調査2~COVID-19流行下での実態~

○本橋 佳子1、枝広 あや子1、高橋 知佳1、目黒 郁美2、高城 大輔3、紙本 千晶4、深澤 佳世5、木元 あすか6、星野 大地7、宇良 千秋1 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 日本大学大学院松戸歯学研究科歯学専攻 有床義歯補綴学、3. ひまわり歯科、4. 曙橋歯科、5. 新宿医療専門学校、6. 板橋区立志村健康福祉センター、7. 昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座地域連携歯科学部門)

【目的】 

都市部在住認知機能低下高齢者のCOVID-19流行下における口腔状態を把握するために訪問調査を行った。

【方法】

2016年東京都T地区で訪問調査を受け、その後2019年に訪問調査での精神科医による認知機能評価が行われた者で訪問口腔調査に同意が得られた75名(男性30名女性45名)平均年齢83.5±5.3歳 MMSE 平均21.52±4.69 に対し2020年1~3月、7~9月に3名の歯科専門職が訪問し、生活調査、身体計測、口腔機能評価を行った。

【結果と考察】

来場型調査に参加困難な地域在住認知機能低下高齢者へ訪問調査を行い、その実態を把握した。T地区は1970年代に開発された大規模団地を擁し、高齢者率が30.7%、55歳以上の居住者の独居率53.2%と、都市部在住高齢者の問題が反映されているものと推察される。33名(44%)は独居で生活をしており、調査対象者の孤食率は50%であった。MNAでは33名(44%)に低栄養のリスクがみられた。口腔機能に関してはオーラルディアドコキネシス(平均【パ】5.47±1.28回【タ】5.68±1.12回 【カ】5.19±1.15回)色変わりガム咀嚼スコア 平均2.8±1.2 残存歯14.5±9.0本と低下がみられROAG 11.1±1.8と 多くが口腔内の問題を抱えている状態であった。

 しかし主観的口腔健康状態は非常に健康である、まあ健康であると答えたものの合計が72%(64人)で口腔内の問題を自覚していない傾向がみられた。かかりつけ歯科を持っているものは76%(57人)であったがここ一年で歯科受診していない者は45.3%(34人)であった。調査対象者ほとんどの者に口腔内の問題があったものの、自覚に乏しく、歯科治療に結びついていなかった。

 COVID-19流行下では多くの高齢者が外出を控え、活動量の低下のみならず親族・知人との交流が減り、社会的な孤立があったことも、口腔機能の低下に影響があったと予想される。口腔内の問題を放置し対応していないことで、低栄養に繋がる予兆も見られた。社会的弱者の地域在住認知機能低下高齢者に対して、必要な医療が滞ることを防ぐために、口腔の問題を早期に発見し自覚を促すことが必要であり、適切な介入を積極的に行う体制の整備が急務と思われた。(TMIG倫理審査委員会承認番号元健イ事第3146号-36)(COI開示:なし)