[P一般-035] 非経口摂取患者における口腔衛生管理後の口腔内湿潤経過と全身状態の関連
【目的】
非経口摂取患者は,口腔機能および唾液分泌の低下が相まって自浄作用が低下するため,口腔内環境が劣悪になりやすい。良好な口腔内環境の持続には口腔内湿潤状態の維持が重要であるが,非経口摂取患者における口腔衛生管理後の口腔内湿潤経過については不明である。本研究は,非経口摂取患者における口腔衛生管理後の湿潤度を経時的に測定し,その経過と全身状態などの関連について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,北九州市内の某急性期総合病院に2020年9月から2021年1月に入院した患者のうち,非経口摂取で安静時に開口および口腔乾燥所見が認められた65名(平均年齢83.9±8.8歳,男性32名,女性33名)とした。口腔衛生管理として,口腔清掃後に口腔湿潤剤ビバ・ジェルエット(東京技研)を塗布した。湿潤度は,口腔水分計ムーカス®️(ライフ社)を用い,口腔衛生管理前,口腔湿潤剤塗布直後,塗布1時間後,2時間後,3時間後に舌および頬粘膜を評価した(中央値)。その後,診療録より全身状態を抽出した。統計学的解析は,Wilcoxonの符号付き順位検定,二項ロジスティック回帰分析などを用い,p<0.05を有意とした。
【結果と考察】
舌の湿潤度における中央値は,口腔衛生管理前4.6,口腔湿潤剤塗布直後26.2,1時間後22.7,2時間後18.1,3時間後13.4であった。頬粘膜では,口腔衛生管理前22.5,塗布直後26.8,1時間後26.3,2時間後25.0,3時間後25.1であった。舌と頬粘膜における湿潤経過の違いについては,1時間後,2時間後,3時間後において舌の湿潤度が有意に低かった。舌における,口腔湿潤剤塗布直後と3時間後における湿潤度の差の中央値が13.9であったことから,14.0未満を軽度乾燥群,14.0以上を重度乾燥群と分類し,湿潤度を目的変数,臨床的に易乾燥性と関連が疑われる項目(年齢,性別,BMI,服薬内容:Ca拮抗薬,利尿剤,抗パーキンソン病薬)などを説明変数として二項ロジスティック回帰分析を行ったところ,利尿剤が関連因子であることが示された(p<0.05)。以上より,非経口摂取患者において口腔衛生管理後は,頬粘膜と比較して舌は易乾燥性であり,易乾燥性には利尿薬が関連している可能性が示された。
(COI開示:なし)(済生会八幡総合病院倫理委員会 承認番号161)
非経口摂取患者は,口腔機能および唾液分泌の低下が相まって自浄作用が低下するため,口腔内環境が劣悪になりやすい。良好な口腔内環境の持続には口腔内湿潤状態の維持が重要であるが,非経口摂取患者における口腔衛生管理後の口腔内湿潤経過については不明である。本研究は,非経口摂取患者における口腔衛生管理後の湿潤度を経時的に測定し,その経過と全身状態などの関連について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,北九州市内の某急性期総合病院に2020年9月から2021年1月に入院した患者のうち,非経口摂取で安静時に開口および口腔乾燥所見が認められた65名(平均年齢83.9±8.8歳,男性32名,女性33名)とした。口腔衛生管理として,口腔清掃後に口腔湿潤剤ビバ・ジェルエット(東京技研)を塗布した。湿潤度は,口腔水分計ムーカス®️(ライフ社)を用い,口腔衛生管理前,口腔湿潤剤塗布直後,塗布1時間後,2時間後,3時間後に舌および頬粘膜を評価した(中央値)。その後,診療録より全身状態を抽出した。統計学的解析は,Wilcoxonの符号付き順位検定,二項ロジスティック回帰分析などを用い,p<0.05を有意とした。
【結果と考察】
舌の湿潤度における中央値は,口腔衛生管理前4.6,口腔湿潤剤塗布直後26.2,1時間後22.7,2時間後18.1,3時間後13.4であった。頬粘膜では,口腔衛生管理前22.5,塗布直後26.8,1時間後26.3,2時間後25.0,3時間後25.1であった。舌と頬粘膜における湿潤経過の違いについては,1時間後,2時間後,3時間後において舌の湿潤度が有意に低かった。舌における,口腔湿潤剤塗布直後と3時間後における湿潤度の差の中央値が13.9であったことから,14.0未満を軽度乾燥群,14.0以上を重度乾燥群と分類し,湿潤度を目的変数,臨床的に易乾燥性と関連が疑われる項目(年齢,性別,BMI,服薬内容:Ca拮抗薬,利尿剤,抗パーキンソン病薬)などを説明変数として二項ロジスティック回帰分析を行ったところ,利尿剤が関連因子であることが示された(p<0.05)。以上より,非経口摂取患者において口腔衛生管理後は,頬粘膜と比較して舌は易乾燥性であり,易乾燥性には利尿薬が関連している可能性が示された。
(COI開示:なし)(済生会八幡総合病院倫理委員会 承認番号161)