一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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地域歯科医療部門

2021年6月12日(土) 10:10 〜 11:10 Line B (ライブ配信)

[優秀P地域-01] 歯科医院通院患者における口腔機能の主観的症状と口腔機能低下症の関連性の検討

○眞田 知基1、久保 慶太郎2,4、河野 立行3,4、齋藤 壮4、堀部 耕広4、竜 正大4、上田 貴之4 (1. 秋山歯科クリニック、2. 久保歯科医院、3. 河野歯科医院、4. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)

目的

口腔機能低下に対して口腔機能精密検査を行うか否かは、歯科医師の主観に頼るところが大きく、患者の自覚症状があったとしても口腔機能低下症を見過ごす可能性がある。しかし、患者の口腔機能に関する主観的な症状の有無と口腔機能低下症との関連は明らかにされていない。この関連が明らかとなることで、口腔機能精密検査の対象者がより明確となり、患者の訴えが口腔機能低下症のスクリーニングとなることが考えられる。そこで、本研究の目的は、質問票による患者の口腔機能の低下に関する主観的な症状と口腔機能低下症との関連を明らかにすることとした。

方法

東京都、千葉県の3歯科医院で定期健診を受診した患者で、今回の研究に同意を得られた40歳から96歳までの者151名(中央値74歳)を対象とした。「口の中が乾くようになった」、「硬いものが食べにくくなった」、「食事の時間が長くなった」など口腔機能低下に関する9項目からなる質問票に回答させ、1項目以上該当するものを主観的口腔機能低下とした。その後、口腔機能精密検査を行った。主観的口腔機能低下と口腔機能低下症の有無との関連について、χ2検定、ROC曲線による分析を用いて行った。(α=0.05)

結果と考察

主観的口腔機能低下を認めたものは107名(70.8%)で、口腔機能低下症の該当者は54名(35.8%)であった。主観的口腔機能低下と口腔機能低下症の有無とに関連を認めた。主観的口腔機能低下と口腔機能低下症とのROC曲線による分析では、感度88.5、特異度38.9 、AUC 0.637(CI:0.547-0.672)となった。質問票による主観的口腔機能低下は、口腔機能低下症との関連が明らかとなり、また、口腔機能低下症の罹患の有無に対する感度が高かったことから、質問票が口腔機能低下症のスクリーニングになる可能性が示唆された。本研究結果より、定期検診時に患者の些細な口腔機能の低下を質問票でとらえることによって、口腔機能低下症の検査を行う対象者が明確となり、口腔機能低下の早期発見、口腔機能管理の早期実施につながることが期待される。
(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号 986)