一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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地域歯科医療部門

2021年6月12日(土) 10:10 〜 11:10 Line B (ライブ配信)

[優秀P地域-02] 地域在住の後期高齢者の口腔機能評価に関する横断調査

○石田 健1,2、和田 誠大2、三原 佑介1,2、辻岡 義崇2、明間 すずな2、長谷川 大輔2、豆野 智昭2、八田 昂大2、池邊 一典2 (1. JAみなみ信州歯科診療所、2. 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野)

【目的】
 2016年、日本老年歯科医学会により口腔機能低下症が定義され,本症の検査と管理に対して保険収載がなされたことにより,近年その注目度が高まっている.これまで,口腔機能低下症の割合は高齢者で高いことが報告されている.しかしながら,各検査項目の低下の実態に関する報告は少ない.そこで,本研究では,地域在住の後期高齢者を対象に口腔機能低下症に用いられる検査をすべて実施し,その現状について調査を行った.
【方法】
 本研究の対象者は,2018年10月から2020年11月の間に,長野県JAみなみ信州阿南歯科診療所にて口腔機能低下症の検査を実施した75歳以上の後期高齢者87名(男性34名,女性53名,平均年齢82.9±8.8歳)を対象とした.口腔機能低下症の診断項目として,口腔乾燥(口腔水分計あるいはサクソンテスト),口腔衛生状態(Tongue Coating Index;TCI),咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能(スコア法),嚥下機能(EAT-10)をそれぞれ計測した.
【結果と考察】
 対象者87名中,81名(93.1%)が口腔機能低下症と診断された.これらのうち検査項目中3項目に該当したものは31名(38.3%),6項目に該当したものが10名(12.3%)であった.なお7項目すべてに該当する対象は認められなかった.各検査項目の該当率は,嚥下機能が最も少なく1名(1.2%)であったのに対し,舌口唇運動機能では77名(88.5%),咀嚼機能では74名(85.1%),咬合力では66名(75.9%),舌圧では66名(75.9%)とその割合は高く,また口腔衛生状態およびTCIも,それぞれ50名(57.4%),42名(48.3%)と約半数が該当する結果となった.本研究の結果より後期高齢者の口腔機能は,現在の診断基準において非常に高い割合で低下症に該当することが明らかになった.一方,EAT-10による嚥下機能に対する該当者は非常に少ないにも関わらず,その前段階である舌口唇運動機能,咀嚼機能,咬合力及び舌圧は,該当者が3/4以上を占める結果となった.現在までに大部分の後期高齢者の口腔機能は低下してしていることが報告されており本研究結果もこれを支持するものではあるが,後期高齢者においては低下症の割合が高すぎることから,各年代の口腔機能に応じた基準を設ける必要があると考えられる.