一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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歯科衛生士部門

2021年6月12日(土) 11:20 〜 12:20 Line B (ライブ配信)

[優秀P衛生-01] 他職種が評価可能な口腔機能低下の予測因子の探索

○末永 智美1,2、吉野 夕香3,4、金本 路2、植木 沢美2、川上 智史5、會田 英紀6 (1. 北海道医療大学大学院歯学研究科高齢者・有病者歯科学分野、2. 北海道医療大学在宅歯科診療所、3. 北海道医療大学大学院歯学研究科保健衛生学分野、4. 北海道医療大学病院医療相談・地域連携室、5. 北海道医療大学高度先進保存学分野、6. 北海道医療大学歯学部高齢者・有病者歯科学分野)

【目的】

 介護施設利用者の口腔機能低下症有病率は約9割と報告されており,要介護高齢者への適切な口腔機能評価・介入が求められている。しかし,認知機能が低下した高齢者では検査の指示理解が得られず現状の診断方法では適切な評価が困難な症例もみられる。そこで,歯科専門職に限らず日常生活に関わる施設職員等の“気づき”による客観的評価から,「口腔機能検査の実施可否」と「口腔機能の低下」を予測可能とすることが重要であると考えた。予測候補因子は,舌圧や嚥下障害など特定の口腔機能との関連が報告されている日常生活動作(以下,ADL)とリンシングとした。本研究は介護施設利用中の高齢者を対象に,口腔機能,認知機能,ADL,栄養状態について評価を行い,口腔機能低下症の全検査実施可否と口腔機能低下の予測因子になり得るか検討を行った。

【方法】

 本研究に協力が得られた北海道内の介護施設に入所中および通所サービス利用中の高齢者で,本研究の参加に同意が得られた103名を分析対象者とした。調査項目は,口腔機能低下症の検査7項目,Clinical Dementia Rating(以下,CDR),栄養状態に加え,予測候補因子としてFunctional Independence Measure(以下,FIM)とリンシングを評価した。

【結果と考察】

 口腔機能低下症の全検査が実施可能で3項目以上「低下」に該当した者は52.4%(54名),該当しない者は6.8%(7名)であり,検査実施「不可」が1項目以上あり全検査実施が困難だった者は40.8%(42名)だった。検査困難な者は,CDRスコアの増大に伴い増加した。口腔機能低下症の全検査実施可否との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った結果,CDRとリンシングに有意な関連が認められた(モデルχ検定p<0.01)。また,各口腔機能検査との関連について重回帰分析を行った結果,FIM総スコアと舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能において有意な関連が認められた(p<0.05)。歯科専門職以外でも客観的に評価可能なFIMとリンシングは,口腔機能低下症の全検査実施の可否ならびに口腔機能低下を予測できる可能性が示唆され,多職種との円滑な連携や適時適切な歯科的介入に繋がると考えられる。

(COI開示:なし)

(北海道医療大学予防医療科学センター倫理委員会承認番号 第2018-005号)