一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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歯科衛生士部門

2021年6月12日(土) 11:20 〜 12:20 Line B (ライブ配信)

[優秀P衛生-05] 歯科標榜のない急性期病院での高齢者に対する外科周術期口腔機能管理の取り組みの現状調査

○中山 良子1 (1. 岡山市立市民病院 入退院管理支援センター)

【目的】

近年の超高齢社会の影響で、多疾患併存の高齢者の癌手術症例が増加し、社会的背景に基づく生涯設計も踏まえた包括的観点を有する周術期管理を行う必要がある。当院は2018年4月に歯科衛生士着任後、地域の歯科医院と連携した周術期等口腔機能管理体制の整備を、外科と共同で開始した。外科外来で口腔機能と歯牙に関する管理や機能の質問、かかりつけ歯科の有無、歯科連携の同意を確認する問診票を導入し、歯科衛生士による地域の歯科医院との連携を開始した取り組みを報告する。

【方法】

2020年3月から11月まで当院外科で手術を行った後期高齢者75歳以上の癌症例を対象とし、当院の取り組みの効果と臨床経過を検討した。口腔衛生環境はOHAT、栄養評価はCONUTスコア、合併症はClavien-Dindo(CD)分類を使用した。統計ソフトはEZRを使用し、2群間の比較はMann-Whitney検定、カイ二乗検定を用い、有意水準を5%とした。代表値は中央値で示した。

【結果と考察】

対象症例は32例、男性15例、女性17例、年齢81.5歳(75-94)であった。疾患臓器は胃・結腸10例、肝臓5例、乳腺4例の順に多く、CD分類II以上の合併症を12例に認め、誤嚥性肺炎は1例のみであった。術前に歯科受診をしたが、歯牙脱落、補綴物脱離を一例ずつ認めた。入院決定から入院まで11日で、28例に術前歯科受診の同意を得たが受診は26例(81%)で、入院決定から歯科受診まで4日であった。口腔評価は、残存歯7本(0-28)、OHAT3点以上を15例に認めた。問診票では14例に口腔機能の問題、23例に歯症状があると回答し、かかりつけ歯科ありは20例(62.5%)であった。口腔機能に問題がある症例は有意に歯牙に関する症状を有し(p=0.001)、OHATも高かった(p<0.05)。口腔機能の問題、歯牙に関する症状を有する症例は有意にアルブミン値が低値(p<0.05)だが、CONUTで有意差を認めず、術前歯科受診がOHATや合併症発生に影響しなかった。癌診療では口腔環境の悪化した高齢者が多く、本取り組みによるかかりつけ歯科の必要性の患者啓発と地域歯科との連携強化による退院後も継続した口腔機能管理の必要性が示唆された。

(岡山市立市民病院 倫理審査委員会承認番号1-258)