一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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課題口演1
地域包括ケアシステム

2021年6月13日(日) 09:00 〜 10:15 Line A (ライブ配信)

[課題1-4] 地域包括ケア病棟入院患者における口腔環境と在宅復帰困難の関連について

○中村 純也1,2、芝辻 豪士1、足立 了平1 (1. 医療法人社団関田会 ときわ病院 歯科口腔外科、2. 神戸大学大学院保健学研究科パブリックヘルス専攻)

【目的】
 地域包括ケア病棟は入院患者の在宅生活継続を支えるために退院支援という重要な役割を担っている。その中で歯科が果たす役割として高齢者の口腔内評価,口腔機能管理や食支援などが考えられているが,地域包括ケア病棟入院時の口腔内の状況が在宅復帰とどのように関連しているかを調査した研究は少ない。今回,地域包括ケア病棟入院患者において入院時口腔環境が在宅復帰困難に及ぼす影響を検討した。
【方法】
 本研究では2019年1~12月に当院地域包括ケア病棟に入院した330名の内,65歳未満,短期入院,終末期医療であった者およびデータ欠損を認めた74名を除外した256名(年齢84.7±7.7歳,女性171名)を解析対象とした。入院時の口腔内をOral Health Assessment Tool(OHAT)合計点数で評価し,口腔環境と在宅復帰困難の関連を検討するため,在宅復帰の可否を目的変数,OHATの合計点数を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。その後先行研究に基づき,年齢,性別,BMI,独居,入院時認知機能,運動機能を交絡変数として投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。またROC曲線を用いて在宅復帰困難を予測するための入院時OHATカットオフ値を算出した。
【結果と考察】
 在宅復帰困難は居宅からの入院患者の25.7%に認めた。ロジスティック回帰分析の結果,入院時のOHATの点数は在宅復帰困難と独立して関連することが示された。(未調整オッズ比:1.38, 95%CI:1.18-1.62, p<0.01,調整後オッズ比:1.23, 95%CI:1.02-1.49, p=0.03)。また,ROC曲線から求めた在宅復帰困難を予測する入院時OHATカットオフ値は4点(感度63%,特異度68%,AUC: 0.696,95%CI: 0.61-0.78)であった。認知・運動機能の低下や介護力不足などが入院時の口腔問題に反映されており,そのことが入院中の誤嚥性肺炎発症や経口摂取不良などに影響し在宅復帰困難につながっている可能性が示唆される。地域包括ケア病棟入院時の口腔環境から在宅復帰困難を予測できる可能性があることから,地域包括ケアシステムにおいても口腔内評価が重要であることが示唆された。
(COI開示:なし)
(ときわ病院倫理審査委員会承認番号:R2-5)