The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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課題口演

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課題口演2
口腔機能低下症

Sun. Jun 13, 2021 10:20 AM - 11:35 AM Line A (ライブ配信)

[課題2-4] 開口力は嚥下機能低下の指標として有効である―多施設共同研究の結果より―

○柳田 陵介1、原 豪志2、中川 量晴1、並木 千鶴1、飯田 貴俊3、戸原 雄4、玉田 泰嗣5、水口 俊介6、山口 浩平1、吉見 佳那子1、中根 綾子1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. 神奈川歯科大学附属病院 全身管理高齢者歯科、3. 神奈川歯科大学 全身管理医歯学講座 全身管理高齢者歯科学分野、4. 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック、5. 長崎大学病院 摂食嚥下リハビリテーションセンター、6. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【目的】
 舌骨上筋群は嚥下における舌骨挙上と開口運動に寄与する。開口運動する力を計測した開口力は,嚥下後の咽頭残留の指標として有用であることが報告されている。口腔機能低下症の診断項目にEAT-10があるが,これに新しい評価を加えることで嚥下機能低下を数量的に明示できると仮説を立てた。そこで本研究では開口力による嚥下機能低下の評価の妥当性について検討した。

【方法】
 対象は,2018年11月から2020年1月にかけて当院および共同研究施設の外来または訪問診療,もしくは地域における検診で診察された65才以上の高齢者のうち,認知症の既往がなく,握力および開口力測定が実施可能な高齢者計403名(男性215名,平均年齢77.0±7.0歳)とした。年齢,性別,既往歴,バーセル指数,開口力,下腿周囲長,握力,舌圧,FOIS(functional oral intake scale),EAT-10を聴取した。ADL(日常生活動作)はバーセル指数を評価し,100の患者を自立,95以下の患者を非自立と定義した。嚥下機能低下の有無はFOISを用いて,level6以上かつEAT-10が2点以下の患者を嚥下機能低下なし,それ以外の患者をありと定義した。嚥下機能低下に関連する因子を検討するため,嚥下機能低下の有無を目的変数,年齢,性別,開口力,ADL,下腿周囲長,握力,舌圧,既往歴(脳血管疾患,パーキンソン病,神経筋疾患それぞれの有無)を説明変数として,二項ロジスティック回帰分析を行った。本研究の一部は日本歯科医学会プロジェクト研究2018-A-4で行われたものである。

【結果と考察】
 対象者のうち嚥下機能低下がみられたのは111名(うち男性58名)であった。二項ロジスティック回帰分析の結果,嚥下機能低下の有無は,年齢,開口力,ADL,下腿周囲長と有意に関連することが分かった(p<0.05)。本結果より,開口力の低下は他の因子と独立して嚥下機能低下のリスク因子になることが示唆された。開口力は簡便な計測が可能であり,EAT-10との併用により口腔機能低下症における嚥下機能低下の指標として有用であると考えられる。
(COI開示:なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認番号 D2014-047)