The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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課題口演

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課題口演2
口腔機能低下症

Sun. Jun 13, 2021 10:20 AM - 11:35 AM Line A (ライブ配信)

[課題2-5] 嚥下障害患者における嚥下造影検査で観察される嚥下動態とサルコペニアとの関連性

○宮下 大志1、菊谷 武1,2,3、永島 圭悟1、田中 公美3、田村 文誉3,2 (1. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科、3. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【目的】

本研究の目的は、摂食嚥下障害患者のうちサルコペニアを有する者の嚥下造影検査(VFSS)で観察される嚥下器官の状態や嚥下時の動態の特徴を明らかにし、サルコペニアが摂食嚥下機能に与える影響を明らかにすることである。

【方法】

対象者は摂食嚥下障害を主訴として日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックに来院した257名である。基本情報として骨格筋量、栄養状態、摂食機能などの調査を行い、Asian Working Group for Sarcopeniaが提唱するサルコペニアの診断基準2014によりサルコペニア群、非サルコペニア群に分類した。また、両群における交絡因子を取り除く目的で、性と年齢を用いた傾向スコアによるマッチングを行った。対象者にVFSSを行いその画像から嚥下器官の状態と嚥下時の動態を測定し、サルコペニアの有無、摂食機能との関連について検討を行った。

【結果と考察】

傾向スコアマッチング後の対象者は156名であり、サルコペニア群78名(男性42名、女性36名、年齢の中央値(四分位範囲)84.5(79.0-89.0)歳)、非サルコペニア群78名(男性42名、女性36名、年齢の中央値82.0(78.0-88.0)歳)となった。嚥下器官の状態と嚥下時の動態では、喉頭上方移動量(P=0.021)においてサルコペニア群が有意に低値を示し、咽頭腔断面積(P<0.001)においてサルコペニア群が有意に高値を示した。FILS(Food Intake LEVEL Scale)の各LEVELとの関連について、LEVEL7とLEVEL8では咽頭腔断面積(LEVEL7:P=0.002、LEVEL8:P=0.009)においてサルコペニア群で有意に高値を示し、LEVEL9では喉頭上方移動量(P=0.037)においてサルコペニア群で有意に低値を示した。サルコペニアは全身の骨格筋のみならず、嚥下関連筋群である咽頭筋の筋力の低下や筋肉量の減少にも影響を及ぼしたと推察される。その結果、喉頭上方移動量の低下、咽頭腔断面積の増加を引き起こしたと考えられた。今後、VFSSによるサルコペニアに関連した摂食嚥下障害の診断基準が確立されれば、迅速な診断を行うことができ、早期からのリハビリテーション介入が可能になると考えられた。
(日本歯科大学 生命歯学部倫理委員会承認番号 NDU-T2020-08)