一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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一般演題(口演)

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一般口演1
介護・介護予防、口腔機能

2021年6月13日(日) 08:50 〜 09:50 Line B (ライブ配信)

座長:竹島 浩(明海大学歯学部病態診断治療学講座高齢者歯科学分野)、羽村 章(日本歯科大学生命歯学部 高齢者歯科学)

[O1-1] 歯ブラシを使用した口腔衛生管理における飛沫予防手技の検証実験

○吉川 浩郎2、内藤 晋一2、清水 潤2、人見 康正2、北村 恵1 (1. 松江地区歯科衛生士会、2. 松江市歯科医師会)

【目的】

 国内での新型コロナウイルス感染症の感染が広がる中, 歯科関係者が行う専門的口腔ケアは飛沫を浴びる確率が非常に高いと考えられる。

そこで, 歯科の重要な業務である口腔衛生管理のうち,「歯ブラシによる口腔清掃」時に発生する飛沫を最小限にする対策を講じて, 感染予防を行う事でリスクの軽減を図らねばならない。我々は, 飛沫を可視化することで飛沫感染予防に対し比較的容易かつ有効な手技を検討し, その効果を検証することとした。

【方法】

車椅子上やベッド上での歯ブラシによる口腔衛生管理が必要な模擬患者を想定し, 床面を白色の模造紙, 患者を白色の布で覆い, 術者は白色の割ぽう着, アームカバー, フェイスシールド, キャップを装着した。プロスペック歯垢染色液(GC)を歯ブラシに直接塗布し, 100秒間ブラッシングを行い, 床面, 患者を覆う布, 術者への染色液の飛沫拡散状態を観察・記録した。同時に飛沫がどの様に飛んでいるかをハンディカムによるハイスピード撮影を行い記録した。次に, 飛沫拡散予防策としてお口を洗うジェル(ニシカ)を併用し, さらに術者は指先に不織布ガーゼを巻き付け, 余分な水分や唾液をふき取りながら同様にブラッシングを行い, 飛沫拡散状態を観察・記録した。

【結果と考察】

 飛沫拡散予防策を講じないで行ったブラッシングによって, 術者の背部や模擬患者の足元の床面など染色液の多数で広範囲にわたる飛沫拡散が確認された。それに対し, 飛沫拡散予防策を講じた場合の飛沫拡散は, その数と範囲いずれも大きく抑制されていることが観察された。車椅子上の模擬患者の下口唇正中からの最大飛沫到達距離を計測したところ1540㎜であり, 対策を講じた場合の距離は360㎜であった。

粘度のあるお口を洗うジェル, 不織布ガーゼを使用し, ブラッシングと同時に水分処理を行う対策により, 飛沫は格段に抑制できることが確認された。この手技は歯科関係者のみならず, 看護・介護関係者にも実施可能と思われる。この考え方が, 飛沫感染の不安から要介護高齢者等への口腔衛生管理が実施されずに, 口腔内や全身の健康とQOLの維持・増進が妨げられることのないような地域づくりの一助となれば幸いである。(COI開示:なし)

(一般社団法人 島根県歯科医師会 倫理委員会承認番号 第15号)