[O1-3] 不顕性誤嚥と咀嚼・嚥下機能との関連
【緒言】
現在行われている嚥下スクリーニング検査では,不顕性誤嚥を検出することは難しいとされている。不顕性誤嚥の有無を確認するには,嚥下造影検査(VF)を行う必要があり,施設によっては実施困難であり,また熟練者でないと判定が難しく見落とされる可能性がある。そこで,本研究では総合病院入院中患者の不顕性誤嚥の有無と咀嚼・嚥下機能との関連を調べることにより,不顕性誤嚥を予測する上で有用なスクリーニング検査を探索することを目的とした。
【方法】
対象は会津中央病院に入院中に歯科口腔外科に嚥下機能評価のために紹介され,嚥下評価を行った結果,湿性嗄声を認められるものの咳嗽反射があまりない患者や明らかな誤嚥は認められないものの発熱が続く患者など,不顕性誤嚥が疑われVFを行った患者52名(男性36名,女性16名,平均年齢84.9±8.1歳)とした。各患者に対して,口腔機能検査(舌圧検査,ディアドコキネシス,咀嚼能率検査),軟口蓋・咽頭感覚検査(軟口蓋または口蓋咽頭弓付近の圧迫刺激による咽頭絞扼反射惹起の有無),嚥下障害スクリーニング検査(RSST,MWST)を行った。これらの検査結果について,VFの結果をもとにした不顕性誤嚥あり・なし2群間の差を検討した。次に,ロジスティック回帰分析を用い,不顕性誤嚥に関連する因子について検討した。
【結果と考察】
VFの結果,52名中21名が不顕性誤嚥あり群と評価され,不顕性誤嚥あり群は不顕性誤嚥なし群と比べて,咽頭感覚(検査可能者52名)が低下している者(P=0.017)と最大舌圧(検査可能者29名)が低下している者(P=0.028)の割合が有意に多かった。また,MWST(検査可能者48名)の結果については,両群間に有意差はなかったものの,湿性嗄声のあるもの(評価3a)が不顕性誤嚥あり群で多かった(P=0.135)。さらに,多変量解析の結果,咽頭感覚が不顕性誤嚥と関連する有意な項目(odds ratio:4.20,P=0.017)として選択された。以上より,咽頭感覚の低下は,不顕性誤嚥の可能性を予測する上で有用なスクリーニング検査であると考えられた。今後症例数を増やし,原疾患ごとに分析し調査をすすめる予定である。
会津中央病院 倫理審査委員会承認番号 1812
COI開示:なし
現在行われている嚥下スクリーニング検査では,不顕性誤嚥を検出することは難しいとされている。不顕性誤嚥の有無を確認するには,嚥下造影検査(VF)を行う必要があり,施設によっては実施困難であり,また熟練者でないと判定が難しく見落とされる可能性がある。そこで,本研究では総合病院入院中患者の不顕性誤嚥の有無と咀嚼・嚥下機能との関連を調べることにより,不顕性誤嚥を予測する上で有用なスクリーニング検査を探索することを目的とした。
【方法】
対象は会津中央病院に入院中に歯科口腔外科に嚥下機能評価のために紹介され,嚥下評価を行った結果,湿性嗄声を認められるものの咳嗽反射があまりない患者や明らかな誤嚥は認められないものの発熱が続く患者など,不顕性誤嚥が疑われVFを行った患者52名(男性36名,女性16名,平均年齢84.9±8.1歳)とした。各患者に対して,口腔機能検査(舌圧検査,ディアドコキネシス,咀嚼能率検査),軟口蓋・咽頭感覚検査(軟口蓋または口蓋咽頭弓付近の圧迫刺激による咽頭絞扼反射惹起の有無),嚥下障害スクリーニング検査(RSST,MWST)を行った。これらの検査結果について,VFの結果をもとにした不顕性誤嚥あり・なし2群間の差を検討した。次に,ロジスティック回帰分析を用い,不顕性誤嚥に関連する因子について検討した。
【結果と考察】
VFの結果,52名中21名が不顕性誤嚥あり群と評価され,不顕性誤嚥あり群は不顕性誤嚥なし群と比べて,咽頭感覚(検査可能者52名)が低下している者(P=0.017)と最大舌圧(検査可能者29名)が低下している者(P=0.028)の割合が有意に多かった。また,MWST(検査可能者48名)の結果については,両群間に有意差はなかったものの,湿性嗄声のあるもの(評価3a)が不顕性誤嚥あり群で多かった(P=0.135)。さらに,多変量解析の結果,咽頭感覚が不顕性誤嚥と関連する有意な項目(odds ratio:4.20,P=0.017)として選択された。以上より,咽頭感覚の低下は,不顕性誤嚥の可能性を予測する上で有用なスクリーニング検査であると考えられた。今後症例数を増やし,原疾患ごとに分析し調査をすすめる予定である。
会津中央病院 倫理審査委員会承認番号 1812
COI開示:なし