一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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一般演題(口演)

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一般口演1
介護・介護予防、口腔機能

2021年6月13日(日) 08:50 〜 09:50 Line B (ライブ配信)

座長:竹島 浩(明海大学歯学部病態診断治療学講座高齢者歯科学分野)、羽村 章(日本歯科大学生命歯学部 高齢者歯科学)

[O1-5] 非急性期病院入院高齢者における口腔機能と栄養状態の関連

○太田 緑1、今村 嘉希2、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座、2. 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座)

【目的】
 高齢者の栄養状態は口腔機能と密接に関連していると考えられる。本研究では,非急性期病院に入院中の高齢者に対し口腔機能と栄養状態を評価し,口腔機能低下症の診断のための7項目の検査のうちどの項目が栄養状態に関連しているか検討を行った。
【方法】
 ジュネーブ大学リハビリテーション病院に入院中の70歳以上の高齢者60名(平均年齢83±7歳)を対象とした。経管栄養の者,コントロール不良の糖尿病患者,嘔吐,下痢など胃腸症状のある者は除外した。口腔機能精密検査および栄養状態(Nutritional Risk Score ;NRS)の評価を行った。栄養状態と各口腔機能との相関関係について,Spearmanの相関係数を算出した。また栄養状態との関連について,口腔湿潤度,口腔衛生状態(舌表面微生物数),最大舌圧,舌口唇運動機能(オーラルディアドコキネシス/ta/),咬合力,咀嚼機能(グルコース溶出量),嚥下機能(EAT-10)の7項目を従属変数として強制投入法で線形重回帰分析を行った(α=0.05)。舌口唇運動機能は,各音節に強い相関関係が認められたため多重共線性を考慮して(/ta/)を投入した。
【結果と考察】
 対象者のうち53名(88%)が口腔機能低下症と診断され,NRS(平均±SD)は2.9±1.3であった。
 各項目のうち,口腔湿潤度(R=-0.280),/ta/(R=-0.398),舌圧(R=-0.297),咬合力(R=-0.259),嚥下機能(R=0.284)に有意な相関が認められた。また,線形重回帰分析の結果,舌口唇運動機能(/ta/)は栄養状態と関連することが明らかとなった(標準化係数β=-0.355, p=0.020)。これまで咀嚼機能など一部の口腔機能と栄養状態の関連を検討したものはあるが,口腔機能を複合的に評価して関連を検討した研究は少ない。本研究では,口腔機能の7つの評価項目のうち、咀嚼機能や咬合力などには栄養状態との関連を認めず、舌口唇運動機能とに関連を認めた。このことから,舌や口唇の巧緻性といった運動機能が高齢者の栄養管理において重要であることが示唆された。

(COI開示:なし)
(スイス研究倫理委員会CCER 2019-01338)