[O1-6] 有床義歯補綴治療は口腔機能低下症を改善するか?
【目的】
8020達成者が50%を超えた現在でも補綴歯科治療を必要とする者は多い。一方,オーラルフレイルの概念や口腔機能低下症(OHF)の保険病名導入により口腔機能低下への対応が重要視されている。歯を喪失した患者への補綴歯科治療により,咀嚼機能が回復することが報告されているが,OHFのような包括的な口腔機能低下が改善するかは明らかでない。本研究の目的は,OHFと診断された患者への有床義歯の新製がOHFの改善へ及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
歯科医院に受診し,有床義歯補綴治療が必要かつOHFと診断された65歳以上の患者55名(男性17名,女性38名,平均年齢74.1±7.4歳)を対象とした。対象者へ治療開始前(BL)および調整完了後(完了後)の2回,OHFに基づく検査項目7項目を測定した。解析対象は,調整が完了した36名とし,完了後OHFに非該当の群(改善群)と該当した群(非改善群)に分類した。解析項目は,BL・完了後それぞれの改善群・非改善群のOHFの各評価項目の差をMann-WhitneyのU検定で,改善群・非改善群それぞれのBLと完了後の前後比較をWilcoxonの順位符号和検定を用いて行った(有意水準5%)
【結果と考察】
解析対象者36名の内訳は改善群11名,非改善群25名であった。BLで両群に有意差を認めた項目は現在歯数(改善群17.5±5.2本,非改善群11.4±6.3本,p=0.008)のみであった。完了後はTongue Coating Index(TCI,p<0.001),オーラルディアドコキネシス(ODK)「パ」「タ」(p=0.016, p=0.003),咬合力(p=0.003)で両群に有意差を認めた。治療前後の各群の比較では,咀嚼機能が両群とも改善(改善群p=0.016,非改善群p=0.005)し,改善群はTCI(p=0.005),ODK「タ」(p=0.043),咬合力(p=0.003)に有意な上昇がみられた。有床義歯の新製で客観的咀嚼機能は改善するが,残存歯数が少ない患者は義歯新製のみではOHFの改善は困難な可能性が示唆された。一方,口腔衛生状態や舌口唇運動機能は口腔機能管理での改善が期待でき,OHFの改善に義歯製作の前処置として口腔機能管理を実施する必要性が示唆された。
(日本大学松戸歯学部倫理審査委員会承認EC20-040A,040B)
8020達成者が50%を超えた現在でも補綴歯科治療を必要とする者は多い。一方,オーラルフレイルの概念や口腔機能低下症(OHF)の保険病名導入により口腔機能低下への対応が重要視されている。歯を喪失した患者への補綴歯科治療により,咀嚼機能が回復することが報告されているが,OHFのような包括的な口腔機能低下が改善するかは明らかでない。本研究の目的は,OHFと診断された患者への有床義歯の新製がOHFの改善へ及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
歯科医院に受診し,有床義歯補綴治療が必要かつOHFと診断された65歳以上の患者55名(男性17名,女性38名,平均年齢74.1±7.4歳)を対象とした。対象者へ治療開始前(BL)および調整完了後(完了後)の2回,OHFに基づく検査項目7項目を測定した。解析対象は,調整が完了した36名とし,完了後OHFに非該当の群(改善群)と該当した群(非改善群)に分類した。解析項目は,BL・完了後それぞれの改善群・非改善群のOHFの各評価項目の差をMann-WhitneyのU検定で,改善群・非改善群それぞれのBLと完了後の前後比較をWilcoxonの順位符号和検定を用いて行った(有意水準5%)
【結果と考察】
解析対象者36名の内訳は改善群11名,非改善群25名であった。BLで両群に有意差を認めた項目は現在歯数(改善群17.5±5.2本,非改善群11.4±6.3本,p=0.008)のみであった。完了後はTongue Coating Index(TCI,p<0.001),オーラルディアドコキネシス(ODK)「パ」「タ」(p=0.016, p=0.003),咬合力(p=0.003)で両群に有意差を認めた。治療前後の各群の比較では,咀嚼機能が両群とも改善(改善群p=0.016,非改善群p=0.005)し,改善群はTCI(p=0.005),ODK「タ」(p=0.043),咬合力(p=0.003)に有意な上昇がみられた。有床義歯の新製で客観的咀嚼機能は改善するが,残存歯数が少ない患者は義歯新製のみではOHFの改善は困難な可能性が示唆された。一方,口腔衛生状態や舌口唇運動機能は口腔機能管理での改善が期待でき,OHFの改善に義歯製作の前処置として口腔機能管理を実施する必要性が示唆された。
(日本大学松戸歯学部倫理審査委員会承認EC20-040A,040B)