[O2-4] 複合型嚥下補助装置作製と栄養介入によりサルコペニアの摂食嚥下障害が改善に至った一症例
【目的】
サルコペニアの摂食嚥下障害に対して,舌接触補助床(PAP)および軟口蓋挙上装置(PLP)を複合させた嚥下補助装置(mPLP)の使用と,栄養改善を図ることで,3食経口摂取が可能となった症例を報告する。
【症例の概要と処置】
88歳男性。食事中の頻回なムセと,鼻から食物が出ることを主訴に近医より嚥下評価依頼があり当院入院となった。初診時はMNA-SF:7点,BMI:15.8,2週間以上の経口摂取不良で,GLIM基準で低栄養と評価され,歩行不能,握力:22㎏,下腿周囲長:25㎝でありサルコペニアと診断された。口腔機能検査では,口腔乾燥:20.7,舌口唇運動機能低下:pa/4.6回 ta/3.0回ka/3.8回,舌圧:17.8kpa,咀嚼機能低下:20mg/dl,EAT‐10:37点が該当した。第3病日目,VEでは,ゼリー・全粥の鼻腔への逆流,咽頭残留多量であり,喉頭侵入・誤嚥を認めた。咽頭圧形成不全による重度摂食機能障害の診断となった。VFの結果から,胃瘻の適応であったが患者・家族の拒否により,まず必要栄養量を補うため,末梢静脈栄養および補助栄養食品の摂取をした。第12病日目,咽頭収縮圧向上と,残留物の誤嚥回避目的に,リクライニング30度で左側臥位,頭部右側回旋・頸部屈曲位にてVFを実施したところ,咽頭残留はあるが食道流入を認め,誤嚥を回避した。同日,舌と口蓋の接触圧改善,鼻咽腔逆流防止のために,挙上子に軟性裏装剤を用いたmPLPの作製を開始した。第25病日目,mPLPが完成しVEにて再評価を行ったところ,装着時は食物の鼻腔への逆流は認められなかった。
【結果と考察】
第45病日(退院時),BMI:16.5と増加し,mPLP装着にて舌圧:24.1kpa,咀嚼機能低下:157mg/dlまで改善し,全粥・刻みとろみ食・中間とろみと補助栄養で栄養を充足できるようになり退院となった。本症例は,サルコペニアによる摂食嚥下障害に対し,栄養介入とmPLPを併用することで良好な帰結を得ることができた。PLPは軟口蓋挙上することで鼻咽腔閉鎖を改善するが,奥舌部との接触が減少する欠点がある。本症例は,PLPにPAPを付与することで,鼻咽腔閉鎖の改善とともに,舌と口蓋の接触圧を改善し,さらに咽頭収縮圧が高まったことにより,咽頭残留が減少したと考えられる。(COI開示:なし)
サルコペニアの摂食嚥下障害に対して,舌接触補助床(PAP)および軟口蓋挙上装置(PLP)を複合させた嚥下補助装置(mPLP)の使用と,栄養改善を図ることで,3食経口摂取が可能となった症例を報告する。
【症例の概要と処置】
88歳男性。食事中の頻回なムセと,鼻から食物が出ることを主訴に近医より嚥下評価依頼があり当院入院となった。初診時はMNA-SF:7点,BMI:15.8,2週間以上の経口摂取不良で,GLIM基準で低栄養と評価され,歩行不能,握力:22㎏,下腿周囲長:25㎝でありサルコペニアと診断された。口腔機能検査では,口腔乾燥:20.7,舌口唇運動機能低下:pa/4.6回 ta/3.0回ka/3.8回,舌圧:17.8kpa,咀嚼機能低下:20mg/dl,EAT‐10:37点が該当した。第3病日目,VEでは,ゼリー・全粥の鼻腔への逆流,咽頭残留多量であり,喉頭侵入・誤嚥を認めた。咽頭圧形成不全による重度摂食機能障害の診断となった。VFの結果から,胃瘻の適応であったが患者・家族の拒否により,まず必要栄養量を補うため,末梢静脈栄養および補助栄養食品の摂取をした。第12病日目,咽頭収縮圧向上と,残留物の誤嚥回避目的に,リクライニング30度で左側臥位,頭部右側回旋・頸部屈曲位にてVFを実施したところ,咽頭残留はあるが食道流入を認め,誤嚥を回避した。同日,舌と口蓋の接触圧改善,鼻咽腔逆流防止のために,挙上子に軟性裏装剤を用いたmPLPの作製を開始した。第25病日目,mPLPが完成しVEにて再評価を行ったところ,装着時は食物の鼻腔への逆流は認められなかった。
【結果と考察】
第45病日(退院時),BMI:16.5と増加し,mPLP装着にて舌圧:24.1kpa,咀嚼機能低下:157mg/dlまで改善し,全粥・刻みとろみ食・中間とろみと補助栄養で栄養を充足できるようになり退院となった。本症例は,サルコペニアによる摂食嚥下障害に対し,栄養介入とmPLPを併用することで良好な帰結を得ることができた。PLPは軟口蓋挙上することで鼻咽腔閉鎖を改善するが,奥舌部との接触が減少する欠点がある。本症例は,PLPにPAPを付与することで,鼻咽腔閉鎖の改善とともに,舌と口蓋の接触圧を改善し,さらに咽頭収縮圧が高まったことにより,咽頭残留が減少したと考えられる。(COI開示:なし)