The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演)

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一般口演4
症例・施設2

Sun. Jun 13, 2021 9:50 AM - 10:30 AM Line C (ライブ配信)

座長:會田 英紀(北海道医療大学歯学部高齢者・有病者歯科学)、山崎 裕(北海道大学大学院歯学研究院 高齢者歯科学教室)

[O4-1] 舌接触補助症(PAP)の作製前にシリコン印象材による即時PAPを用いた評価が有用であった症例

○佐川 敬一朗1,2、田村 文誉1,2、菊谷 武1,2,3 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学口腔リハビリテーション科、3. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)

【目的】
 舌接触補助床(PAP)は、口腔期の摂食嚥下障害の改善や、舌根部の咽頭圧上昇による咽頭期嚥下障害に効果を期待し作製される。PAPの適用に当たっては、嚥下造影検査(VF)や舌圧測定を行い、適応症か否かの判断を行うことが推奨される。しかしながら、事前にPAPの有用性を判断する明確な診断基準は乏しいのが現状である。今回、シリコン印象材(エグザファインパテタイプ, GC)を用いて、口腔内で簡易的な即時PAPを作製し、VFによる効果検証を行った。その結果、PAP作製の効果を事前に検証することが可能となり、摂食嚥下機能の改善に効果的であった症例を経験した。本報告では、本法の有用性の検証を行う。
【症例の概要と処置】
 82歳、男性。既往歴に摂食嚥下機能障害の原因となる疾患は認めなかった。嚥下時に食物が口腔に逆流することを主訴に当科を受診した。口腔内所見として舌運動の可動域、巧緻性に異常はみられなかった。舌の中央から後方にかけて舌苔の付着を認めた。舌圧は26.5kPaであった。嚥下造影検査の結果、嚥下時の舌口蓋閉鎖の低下により、嚥下時に食物が口腔に逆流する所見が確認された。また、食物の咽頭残留を認めた。その場でシリコン印象材を用いて即時PAPを作製し、舌口蓋閉鎖を改善させると、口腔逆流が消失し、咽頭残留も見られなくなった。PAPの効果が確認されたため、PAPの作製を行った。
【結果と考察】
 PAPの作製を行い、嚥下時の食物の口腔逆流は改善し、舌圧は29.4kPaまで上昇した。食事が摂取しやすくなったことから栄養摂取量の増加を認めた。BMIは17.9kg/m2から19.3kg/m2に改善した。舌の機能低下に対して、PAPによる舌口蓋閉鎖の改善を行ったことが、舌根部の咽頭圧上昇に効果を示し、食物の咽頭残留の減少に繋がったと考えられた。PAPの作製前にVFにより効果の検証が出来たことは、PAPの床概形の設計や床の厚みを付与する際にも有用であった。患者は作製前に効果を体感し、治療を勧奨する上でも効果的であった。PAPの作製を行う上での適応の判断方法として、シリコン印象材を使用した即時PAPの作製が有効であることが示された。