一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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歯科衛生士シンポジウム

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歯科衛生士シンポジウム
認知症の人への歯科衛生士の関わり〜口腔健康管理を通して〜〈DH〉

2021年6月13日(日) 11:10 〜 13:10 Line B (ライブ配信)

座長:藤原 ゆみ((一社)岡山県歯科衛生士会)、阪口 英夫(医療法人永寿会 陵北病院)

[DHSY-1] 歯科衛生士が口腔健康管理という専門性を通じて認知症の人にできること、そして求められていること

○枝広 あや子1 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 認知症と精神保健)

【略歴】
平成15年北海道大学歯学部卒業
平成15年東京都老人医療センター 歯科・口腔外科 臨床研修医
平成17年東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 入局
平成20年東京都健康長寿医療センター研究所 協力研究員
平成23年学位取得、博士(歯学)東京歯科大学
平成24年東京都豊島区歯科医師会 東京都豊島区口腔保健センターあぜりあ歯科診療所勤務、東京都健康長寿医療センター研究所 非常勤研究員
平成27年より現職
日本老年歯科医学会認定医・摂食機能療法専門歯科医師、日本老年医学会高齢者栄養療法認定医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
認知症ケアを考えることは決して他人ごとではなく、自分の未来を考えることでもあります。令和元年にまとめられた認知症施策推進大綱では「共生」と「予防」がキーワードとして提示されました。認知症になっても大丈夫な社会をつくるDementia Friendly Communitiesの創出およびRisk reductionと Primary health careによる一次予防から三次予防までの普及推進、これらを車の両輪のように推進することを目指しています。だれもがいずれ、手助けが必要な時期が来ることを見越したうえで、だれもが安心して暮らせる社会を当事者目線で創る必要があります。社会の中には当然、歯科医療も含まれていることは言うまでもないでしょう。

 地域における認知症医療介護連携の中では、歯や口腔に関する困りごとが見落とされがちで、歯科口腔領域の医療ニーズが満たされていないという課題が依然として横たわっています。認知症の人には、歯科医療の利益を享受する際の様々な障壁があることも、私たちは実感しています。移動や予約の遵守、支払いなど認知症の人には社会生活上の困りごとがあり、また歯科医療従事者が認知症の人への合理的配慮を欠き、本人が適切にPrimary health careを受ける権利を侵害することすらあります。歯科医療従事者である私たちも、生活を支える一翼を担っていることを認識し、口腔だけへのアプローチを超えて生活の場で実践することが、“地域で支える”という目線ではないでしょうか。

様々な困難とともに歩む認知症の方とご家族にとって、必要なことは、一人の人間として大切にされること、生活、そして人生のありようを受け止めて頂き、そのうえで状況に見合った支援を得られることです。私たちが一人一人、人格が違い生活のありようが多様であるように、認知症の人も多様な生活、多様な価値観を持っています。本人にとっての食べることの意味、そのために必要な支援の組み立ては、本人を見つめる目線と現場の経験知から生み出されるものです。認知症の人の長いEnd-of-lifeステージにおいては、口腔や食の支援をする中で、本人が意思表示する一つ一つのメッセージを大切に受け取り、Shared decision makingに活かすことでかけがえのない一人の人の最期の希望を叶えることが出来るでしょう。

 ケアの語源は“思いやり”です。認知症の方の症状の背景にあるものが何かを推し量り、そのうえで適切な知識をもって食と口腔の支援に活かすことができる、そんな歯科衛生士が求められています。ただ、目の前の人に必要なことが何かを考える、このことが最初の一歩になるのではないでしょうか。本シンポジウムでは、認知症の人を理解し支援する目線と実践知に焦点を当てます。