一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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愛知県医師会・愛知県歯科医師会ジョイントセッション

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愛知県医師会・愛知県歯科医師会ジョイントセッション
フレイル予防・介護予防のためのフレイル・認知機能と口腔機能の視点

2021年6月12日(土) 11:20 〜 12:20 Line A (ライブ配信)

座長:武部 純(愛知学院大学歯学部有床義歯学講座)、冨田 健嗣(一般社団法人愛知県歯科医師会地域保健部)

[JS-2] 口腔機能低下の実態と関連する諸因子

○内堀 典保1 (1. 一般社団法人愛知県歯科医師会)

【略歴】
氏  名 内堀 典保 (うちぼり のりやす) 

生年月日 昭和27年6月25日生

昭和46年 愛知県立旭丘高等学校卒
昭和53年 愛知学院大学歯学部卒
昭和57年 藤田学園保健衛生大学(現 藤田医科大学)医学部大学院修了
     (病理学専攻 医学博士号授与)
昭和57年 名古屋市中村区にて開業
 
[愛知県愛知県歯科医師会関係]
平成15年4月 愛知県歯科医師会理事(1期2年)
平成19年4月 愛知県歯科医師会代議員(2期4年)
平成23年4月 愛知県歯科医師会副会長(4期6年3ヵ月)
平成29年6月 愛知県歯科医師会会長(現任)

[日本歯科医師会関係]
平成18年4月 日本歯科医師会疑義解釈委員会副委員長(1期3年)
平成23年4月 日本歯科医師会代議員(現任)

[賞 罰]
平成24年3月13日  日本公衆衛生協会長表彰
平成24年10月27日  日本歯科医師会会長表彰
平成26年11月8日  厚生労働大臣表彰
令和2年11月18日  愛知県条例表彰
オーラルフレイルはプレフレイルと位置付けされ、全身のフレイルの要因の1つと考えられている。オーラルフレイルを予防するには口腔機能の維持・改善を促すことが重要である。愛知県歯科医師会は厚生労働省老人保健健康増進事業を受託し、愛知県知多郡東浦町において2018年から2020年までの3年間、65~84歳の地域住民を対象とした口腔機能および筋力や認知機能の測定調査を行った。調査参加者には口腔機能向上プログラムへの参加や口腔機能低下症を周知する冊子の配布を行い、口腔機能向上の知識の周知に努めた。2020年度では口腔機能低下症の発現時期を知るために、40~64歳の歯科医師会会員を対象とした口腔機能検査を行った。また調査以外に、口腔機能の検査と維持・改善をサポートする人材育成研修会の開催や、関連多職種に向けた啓発用映像資料の作成、一般高齢者に向けた家庭や通いの場で活用できる映像資料の作成を行った。
地域住民調査の結果、2018年度の口腔機能低下症該当者率は63.0%であったが、2020年度では36.2%に減少した。自治体における啓発活動が、地域住民の口腔機能の向上を促すことが確認された。個々の口腔機能をみると7項目中6項目で改善がみられたが、口腔乾燥には改善がみられなかった。また口腔機能と全身の関係としては、握力は咬合力(r=0.28)や舌圧(r=0.20)と正の相関を示し、BMIは舌圧(r=0.25)と正の相関を示した。改訂長谷川式簡易知能評価スケールの点数は咬合力(r=0.14)、舌口唇運動(r=0.27)、舌圧(r=0.16)と正の相関を示した。口腔機能は握力やBMI、認知機能と関連があることが示唆された。2020年度の調査では、縦断的な分析により口腔機能と認知機能の因果関係を探る予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大により調査規模の縮小を余儀なくされ、解明には至らなかった。一方でアンケート調査の拡充も行い、口腔機能の自己評価と測定値の結果の違いを検証した。その結果、自己評価では健康であると判断していても、測定値では低下を示した者が多く、自己評価と測定値の結果は大きく乖離していた。口腔機能の把握には客観的な口腔機能測定が必須であることが確認された。
歯科医師を対象とした調査では、40~44歳の者でもすでに7.0%が口腔機能低下症に該当し、50~54歳では17.3%の者が、60~64歳では27.9%の者が口腔機能低下症に該当した。年齢が上がるにつれ、口腔機能低下者の割合も増加していくことが確認できた。口腔リテラシーが高いと思われる歯科医師においてさえ若い年代からの口腔機能低下が確認されたことから、早期からの口腔機能低下に対する重要性が確認された。
(COI開示:なし)
愛知県歯科医師会倫理審査委員会承認番号 愛歯発第183号