The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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シンポジウム1
口腔機能の生理的老化と病的老化〈専〉〈日〉

Sat. Jun 12, 2021 1:40 PM - 3:10 PM Line A (ライブ配信)

座長:池邉 一典(大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野)、吉田 光由(広島大学医系科学研究科先端歯科補綴学)

[SY1-1] 生理的・病的老化とフレイル・サルコペニア

○杉本 研1 (1. 川崎医科大学 総合老年医学)

【略歴】
1996年 大阪大学医学部医学科卒業
1997年 桜橋渡辺病院循環器内科医員
2004年 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校医療センター ポスドク研究員
2008年 大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 助教
2013年 大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学(老年・総合内科学)講師
2020年 川崎医科大学総合老年医学 主任教授
加齢とは、その良し悪しに関わらず年齢を重ねるごとに起こる過程や現象を意味する。また老化は「生理的老化」と「病的老化」に分けられるが、加齢の結果として個人差はあるものの誰にでも起こりうる変化のことを「生理的老化」、疾患や受傷により生じ、それらの合併症やお互いに重なり合うことによって起こる変化のことを「病的老化」という。 
この「生理的老化」と「病的老化」により、医療だけでなく看護や介護が必要な高齢者にみられる症状のことを老年症候群と呼び、その例としてはめまい、ふらつき、倦怠感、尿失禁、もの忘れ、うつ、口腔機能低下などがある。老年症候群はともすれば「年のせい」「気のせい」「死にはしないから」と放置されがちだが、その結果不可逆になると要介護や寝たきりの原因となるため、原因となる疾患があるのか、生理的老化なのか、可逆的なのかを早期に判断することが求められる。
その判断法として有用とされるのが高齢者総合機能評価(CGA)であり、また可逆的な状態か否かを判断するのに有用とされるのがフレイル評価である。CGAはADL、認知機能、精神状態などを一定の評価手技によって評価するもので、フレイル評価と組み合わせることにより、個々の高齢者が抱える問題点を明らかにし、必要な介入を考慮することが可能となる。
フレイルは身体的・精神的・社会的側面を有し、それらが複雑に絡み合うことによって生じると考えられている。身体的フレイルの中核をなす病態がサルコペニアであるが、サルコペニアは筋肉に特化した概念であり疾患として捉えられるため、口腔機能低下症を含め他の疾患との関連がよく検討されている。最近の研究の進歩により、フレイル、サルコペニアとも疾患の重症化や予後悪化に関連することが明らかにされ、効果的な介入に関する報告も増加している一方で、実臨床においてはこれらを適切に診断し、その結果に基づく適切な対応が実施されていないのが現状である。
本シンポジウムでは、生理的老化・病的老化が原因となる老年症候群、フレイル、サルコペニアの現状を概説するとともに、解決すべき課題について考察したい。