[SY1-3] 口腔機能低下症・オーラルフレイルにおける口腔機能の老化の考え方
【略歴】
1999年 東京歯科大学卒業
2003年 東京歯科大学大学院歯学研究科修了
2003年 東京歯科大学・助手
2007年 東京歯科大学・講師
2007年 長期海外出張(スイス連邦・ベルン大学歯学部補綴科客員教授)
2010年 東京歯科大学・准教授
2019年 東京歯科大学教授
主な活動
一般社団法人日本老年歯科医学会 常任理事・専門医・指導医・学術委員会委員
公益社団法人日本補綴歯科学会 代議員・専門医・指導医・社会保険医療問題検討委員
1999年 東京歯科大学卒業
2003年 東京歯科大学大学院歯学研究科修了
2003年 東京歯科大学・助手
2007年 東京歯科大学・講師
2007年 長期海外出張(スイス連邦・ベルン大学歯学部補綴科客員教授)
2010年 東京歯科大学・准教授
2019年 東京歯科大学教授
主な活動
一般社団法人日本老年歯科医学会 常任理事・専門医・指導医・学術委員会委員
公益社団法人日本補綴歯科学会 代議員・専門医・指導医・社会保険医療問題検討委員
口腔機能は、様々な機能の複合体である。咀嚼、嚥下、発音などの運動性口腔機能、唾液分泌、免疫などの分泌性口腔機能、味覚、温度感覚、食品認知などの感覚性口腔機能に大別される。これまでの歯科の歴史の中では、これらの個々の口腔機能を評価し、その治療が行われてきた。例えば、唾液分泌速度を検査して口腔乾燥症と診断したり、食品粉砕能力を検査して咀嚼障害と診断したりしてきた。
一方で、口腔機能全体の老化の有無の臨床的判断基準としては、「食べたいものを食べることができるか?」、「家族や友人と不自由なく会話することができるか?」といった点が主であろう。これは個々の機能への対応というよりも、患者中心の考え方であると思う。口腔機能の老化が高齢者のフレイル予防や健康寿命の延伸へ与える影響について考える場合にも、口腔機能を1つのものとして捉える方が適しているだろう。口腔機能低下症という疾患定義が誕生したのは、このような背景からである。このように、口腔機能の老化は、その捉え方の変遷により、古くからあるようで新しいテーマであるといえる。
口腔機能低下症の定義やオーラルフレイルの考え方を見てみると、従来型の口腔機能の老化への対応は脳卒中患者や要介護者といった病的老化が中心的イメージであるのに対して、口腔機能低下症やオーラルフレイルが対象としている口腔機能の老化は、生理的老化が中心的イメージとなっているのがわかる。口腔機能低下症の診断のための検査である口腔機能精密検査では、口腔機能、特に運動性口腔機能の生理的老化の兆候をとらえるためのカットオフ値が設定されている。生理的老化であれば、可逆性のある段階で介入することで口腔機能の維持・向上をはかることが可能である。
しかし、口腔機能低下症の先にある「口腔機能の障害」レベルとの境界は、口腔機能精密検査では示されていない。これは、口腔機能低下症の定義を作成する段階から議論されているが、2016年の公表時、2018年の中間報告の時点では基準値を作らないという結論であった。これは、障害レベルの症状については、それぞれの疾患の診断基準があるためである。しかし、可逆性の失われた状態を病的老化と考えるならば、生理的老化と病的老化の境界は示されてないといえるだろう。障害レベル、すなわち病的老化の部分についても口腔機能全体としての基準値を設ける必要があるとの議論が進めば、その検討も必要となってくるだろう。口腔機能の可逆性の有無、すなわち口腔機能管理で回復する見込みがあるのかという視点から、カットオフ値の設定の議論も必要であろう。
一方で、口腔機能全体の老化の有無の臨床的判断基準としては、「食べたいものを食べることができるか?」、「家族や友人と不自由なく会話することができるか?」といった点が主であろう。これは個々の機能への対応というよりも、患者中心の考え方であると思う。口腔機能の老化が高齢者のフレイル予防や健康寿命の延伸へ与える影響について考える場合にも、口腔機能を1つのものとして捉える方が適しているだろう。口腔機能低下症という疾患定義が誕生したのは、このような背景からである。このように、口腔機能の老化は、その捉え方の変遷により、古くからあるようで新しいテーマであるといえる。
口腔機能低下症の定義やオーラルフレイルの考え方を見てみると、従来型の口腔機能の老化への対応は脳卒中患者や要介護者といった病的老化が中心的イメージであるのに対して、口腔機能低下症やオーラルフレイルが対象としている口腔機能の老化は、生理的老化が中心的イメージとなっているのがわかる。口腔機能低下症の診断のための検査である口腔機能精密検査では、口腔機能、特に運動性口腔機能の生理的老化の兆候をとらえるためのカットオフ値が設定されている。生理的老化であれば、可逆性のある段階で介入することで口腔機能の維持・向上をはかることが可能である。
しかし、口腔機能低下症の先にある「口腔機能の障害」レベルとの境界は、口腔機能精密検査では示されていない。これは、口腔機能低下症の定義を作成する段階から議論されているが、2016年の公表時、2018年の中間報告の時点では基準値を作らないという結論であった。これは、障害レベルの症状については、それぞれの疾患の診断基準があるためである。しかし、可逆性の失われた状態を病的老化と考えるならば、生理的老化と病的老化の境界は示されてないといえるだろう。障害レベル、すなわち病的老化の部分についても口腔機能全体としての基準値を設ける必要があるとの議論が進めば、その検討も必要となってくるだろう。口腔機能の可逆性の有無、すなわち口腔機能管理で回復する見込みがあるのかという視点から、カットオフ値の設定の議論も必要であろう。