[SY5-3] 認知症の本人と家族が体験した歯科医療、歯科医療が体験した認知症、その先にあるもの
【略歴】
平成15年北海道大学歯学部卒業
平成15年東京都老人医療センター 歯科・口腔外科 臨床研修医
平成17年東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 入局
平成20年東京都健康長寿医療センター研究所 協力研究員
平成23年学位取得、博士(歯学)東京歯科大学
平成24年東京都豊島区歯科医師会 東京都豊島区口腔保健センターあぜりあ歯科診療所勤務、東京都健康長寿医療センター研究所 非常勤研究員
平成27年より現職
日本老年歯科医学会認定医・摂食機能療法専門歯科医師、日本老年医学会高齢者栄養療法認定医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
平成15年北海道大学歯学部卒業
平成15年東京都老人医療センター 歯科・口腔外科 臨床研修医
平成17年東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 入局
平成20年東京都健康長寿医療センター研究所 協力研究員
平成23年学位取得、博士(歯学)東京歯科大学
平成24年東京都豊島区歯科医師会 東京都豊島区口腔保健センターあぜりあ歯科診療所勤務、東京都健康長寿医療センター研究所 非常勤研究員
平成27年より現職
日本老年歯科医学会認定医・摂食機能療法専門歯科医師、日本老年医学会高齢者栄養療法認定医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
8020運動は最も成功したヘルスプロモーションともいわれるが,この歯科口腔保健活動を展開した以上,認知症になっても口腔の健康を守ることは我々の責務である.歯科医療は医科歯科連携,病診連携,多職種連携を駆使して対応できているのだろうか.
令和2年度に行われた「認知症の状況に応じた高齢者の継続的な口腔機能管理等に関する調査研究事業」において認知症の本人や家族に対して「歯科受診の際の困りごと」について調査し,また口腔保健センターと歯援診1算定事業所を含むかかりつけ歯科医,認知症疾患医療センター指定のある医療機関と大学病院を含む病院歯科に対して「認知症の本人の歯科受診経験」について調査した.
本人と家族に対する調査においては,認知症発症後に独歩で活動できる段階でかかりつけ歯科外来通院を経験したものが多く,本人だけの受診で混乱を経験したからこその困りごとの記述が多かった.口腔に関する相談相手は医師や精神保健福祉士も含まれ,認知症対応可能な歯科医療機関が不明で困窮する旨が報告された.本人家族等が記述する困りごとは歯科治療を進める上でのプロセスごとに収集され,予約16.3%,主訴の申告22.7%,歯科治療中18.8%,説明を受ける際21.3%,治療内容の決定20.9%,支払い12.8%,通院18.4%に困りごとがあり,認知症の症状によるもの忘れや判断力低下に起因する困りごとおよび歯科医療従事者の認知症の無理解に起因する歯科医院における合理的配慮の不足について多くの指摘を認めた.一方,良かったことの記述は50.4%に認められ,その内容は「認知症の病態・症状への理解」と「心理状態への配慮」に集約され,ベストプラクティスの姿ともいえる.
一方,歯科医療機関,病院歯科ともに認知症の本人の歯科治療経験のある対象の7 割程度が,認知症の人の受診にあたり困ったことが「ある」と回答していた.認知症の重症度に関わらず受け入れ可能であるのは歯科医療機関の21.6%,病院歯科の15.9%であった.認知症疾患医療センターおよび認知症サポート医に対する同様の調査も行ったが,認知症の本人の歯科受診の重要性の認識が明確になった.
本調査で得られた結果は,認知症を契機に医科歯科連携,病診連携,多職種連携の課題を突きつけた.課題を直視したうえで,認知症の本人への歯科医療提供体制の質の向上のためには歯科受診プロセスごとのモデルケースや手引きを示し,認知症対応力向上研修に反映させ人材育成を強化する必要がある.歯科医師と地域の認知症医療介護連携の強化を目的に,認知症疾患医療連携協議会等に歯科医師が参画すること,認知症ケアパスに歯科を含めることが必要である.また病院歯科勤務歯科医師は病院内で取り組まれる認知症対応力向上研修への参加や多職種認知症ケアチームへの参画により後方支援体制の整備を行う必要がある.
令和2年度に行われた「認知症の状況に応じた高齢者の継続的な口腔機能管理等に関する調査研究事業」において認知症の本人や家族に対して「歯科受診の際の困りごと」について調査し,また口腔保健センターと歯援診1算定事業所を含むかかりつけ歯科医,認知症疾患医療センター指定のある医療機関と大学病院を含む病院歯科に対して「認知症の本人の歯科受診経験」について調査した.
本人と家族に対する調査においては,認知症発症後に独歩で活動できる段階でかかりつけ歯科外来通院を経験したものが多く,本人だけの受診で混乱を経験したからこその困りごとの記述が多かった.口腔に関する相談相手は医師や精神保健福祉士も含まれ,認知症対応可能な歯科医療機関が不明で困窮する旨が報告された.本人家族等が記述する困りごとは歯科治療を進める上でのプロセスごとに収集され,予約16.3%,主訴の申告22.7%,歯科治療中18.8%,説明を受ける際21.3%,治療内容の決定20.9%,支払い12.8%,通院18.4%に困りごとがあり,認知症の症状によるもの忘れや判断力低下に起因する困りごとおよび歯科医療従事者の認知症の無理解に起因する歯科医院における合理的配慮の不足について多くの指摘を認めた.一方,良かったことの記述は50.4%に認められ,その内容は「認知症の病態・症状への理解」と「心理状態への配慮」に集約され,ベストプラクティスの姿ともいえる.
一方,歯科医療機関,病院歯科ともに認知症の本人の歯科治療経験のある対象の7 割程度が,認知症の人の受診にあたり困ったことが「ある」と回答していた.認知症の重症度に関わらず受け入れ可能であるのは歯科医療機関の21.6%,病院歯科の15.9%であった.認知症疾患医療センターおよび認知症サポート医に対する同様の調査も行ったが,認知症の本人の歯科受診の重要性の認識が明確になった.
本調査で得られた結果は,認知症を契機に医科歯科連携,病診連携,多職種連携の課題を突きつけた.課題を直視したうえで,認知症の本人への歯科医療提供体制の質の向上のためには歯科受診プロセスごとのモデルケースや手引きを示し,認知症対応力向上研修に反映させ人材育成を強化する必要がある.歯科医師と地域の認知症医療介護連携の強化を目的に,認知症疾患医療連携協議会等に歯科医師が参画すること,認知症ケアパスに歯科を含めることが必要である.また病院歯科勤務歯科医師は病院内で取り組まれる認知症対応力向上研修への参加や多職種認知症ケアチームへの参画により後方支援体制の整備を行う必要がある.