[SY5-4] 認知症高齢者に対する歯科治療についての診療ガイドラインを用いた歯学部教育
【略歴】1994年 北海道大学歯学部卒業,
1994年 東京都老人医療センター歯科口腔外科医員
1995年 東京歯科大学口腔外科学第一講座入局
1997年 東京歯科大学オーラルメディシン講座助手
2001年 ドイツ フィリップス・マールブルグ大学歯学部 研究員兼任
2007年 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座講師
2012年 国立長寿医療研究センター 口腔疾患研究部口腔感染制御研究室長
2016年 東京都健康長寿医療センター 研究所 社会科学系 副部長
2019年 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室 准教授 現在に至る
認知症の発症により口腔衛生状態は悪化し、う蝕が多発し、歯周病も重症化しやすい。中等度の認知症高齢者は認知症のない高齢者と比較して、専門的口腔ケア、う蝕治療、歯周治療の必要性が、それぞれ、2.5倍、5.5倍、15.9倍高いとの報告もある。また義歯の取り扱いも困難となり、支台歯や口腔粘膜は不潔になり、咬合関係の不均衡などを引き起こして、口腔内環境は悪化し、やがて義歯の使用が困難になる。そして摂食嚥下機能は大きく障害され、低栄養リスクだけでなく、窒息、誤嚥といったリスクも増大する。日本の認知症の有病者は2025年には700万人になると推定されており、これら認知症の人が多くの口腔の問題を抱えているとすれば、約10万人の歯科医師1人当たり70名を担当しなければならず、認知症への対応は歯科として喫緊の課題となっている。
このような状況を踏まえ、日本においては認知症初期集中支援チームとかかりつけ歯科医との連携や、早期診断・早期対応のための体制整備を目的とした、歯科医師の認知症対応力向上研修が実施されているが、卒前教育においても認知症への対応を行っていく必要がある。そこで北海道大学歯学部では、2019年度より3年生を対象に、歯学モデルコア・カリキュラムで新しく追加された医療倫理観・医療安全、チーム医療、プロファッショナリズムに関する講義・実習を行っている。その中で医療倫理観・医療安全、チーム医療、地域包括ケアシステム、健康長寿社会などの多様なニーズに対応できる歯科医師、また、フロンティア精神および国際的視点を有し歯科医療や歯科医学研究を実践・遂行できる歯科医師として求められる基本的な資質・能力などを養成するために、約1か月間基礎系・臨床系の教室に2~3名を配属し個々の教室で研究活動や希望者には海外短期留学を行っている。その中で高齢者歯科学教室では、認知症をテーマにしたアクティブ・ラーニング形式の学習を実施している。介護保険施設における歯科検診への参加、認知症に関する講義、グループディスカッション、認知症高齢者に対する歯科治療についての診療ガイドラインを用いた発表など、認知症をテーマに多面的な学習を行った。本講演では、その内容と成果について紹介する。
このような状況を踏まえ、日本においては認知症初期集中支援チームとかかりつけ歯科医との連携や、早期診断・早期対応のための体制整備を目的とした、歯科医師の認知症対応力向上研修が実施されているが、卒前教育においても認知症への対応を行っていく必要がある。そこで北海道大学歯学部では、2019年度より3年生を対象に、歯学モデルコア・カリキュラムで新しく追加された医療倫理観・医療安全、チーム医療、プロファッショナリズムに関する講義・実習を行っている。その中で医療倫理観・医療安全、チーム医療、地域包括ケアシステム、健康長寿社会などの多様なニーズに対応できる歯科医師、また、フロンティア精神および国際的視点を有し歯科医療や歯科医学研究を実践・遂行できる歯科医師として求められる基本的な資質・能力などを養成するために、約1か月間基礎系・臨床系の教室に2~3名を配属し個々の教室で研究活動や希望者には海外短期留学を行っている。その中で高齢者歯科学教室では、認知症をテーマにしたアクティブ・ラーニング形式の学習を実施している。介護保険施設における歯科検診への参加、認知症に関する講義、グループディスカッション、認知症高齢者に対する歯科治療についての診療ガイドラインを用いた発表など、認知症をテーマに多面的な学習を行った。本講演では、その内容と成果について紹介する。