一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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シンポジウム6
老年歯科医学の観点からの目指すべき病院歯科像

2021年6月13日(日) 13:50 〜 15:50 Line B (ライブ配信)

座長:大野 友久(浜松市リハビリテーション病院)、岩佐 康行(原土井病院 歯科/ 摂食・栄養支援部)

[SY6-5] 陵北病院における病院歯科活動

○阪口 英夫1 (1. 医療法人永寿会 陵北病院)

【略歴】
1989年 東北歯科大学(現:奥羽大学) 歯学部 卒業
2014年 東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 卒業 歯学博士
2014年 医療法人永寿会 陵北病院 歯科診療部 歯科診療部長
2018年 医療法人永寿会 陵北病院 副院長

認定医・指導医
日本老年歯科医学会 専門医・指導医
日本口腔ケア学会 指導者資格
病院に勤務していると、現代医学ではチームアプローチ(多職種協働)が大変進んでいると感じます。医師の仕事、看護師の仕事、介護職の仕事、リハスタッフの仕事、クラークの仕事等、多岐にわたるスタッフが1人の患者さんに対して医療を行っています。しかし、そのチームの中に歯科医療関係者が常時加わっている例は、いまだ少ないのではないでしょうか。全国で歯科診療科を併設している病院は、約20%程度に留まっています。歯科がない病院は、歯科疾患に対して訪問歯科診療を導入して対応しているとされていますが、それは発生した歯科疾患に対応することが大半で、摂食機能を含めた口腔機能管理が十分行えているとはいえないのが現状です。

 演者は、病院には併設歯科診療科がないと、医科歯科連携は充分進まないと考え、陵北病院の歯科診療科を作ってきました。医局を医科歯科合同としてもらい、医師とのコミュニケーションを充分とれるよう整備し、医師が疑問に思う口腔機能を歯科に依頼してもらうよう働きかけ、依頼数を増やしました。歯科衛生士をすべての病棟に配置し、徹底した口腔衛生管理を実施するとともに、看護師・介護職への情報提供、口腔健康管理の一役を歯科衛生士が担うことで、他職種の業務軽減が図るとともに、その信頼を高めることに成功しました。このような取り組みで病院歯科の重要性を全職員が認識してくれるようになったと感じています。 

 具体的な取り組みについて紹介します。患者さんが入院してくる前に、事前情報としてもたらされた情報は、医師と歯科医師が共同で解析します。特に経口摂取ができなくなっているケースや喫食状況が不安定な患者では、疾患の概要や摂食嚥下障害の原因や対処方法、治療方法などが話合われます。これらの情報をもとに、入院時には医師・歯科医師・看護師・リハスタッフ・歯科衛生士・管理栄養士が立ち合いのもと、患者さんの診察をおこなって栄養提供方法を最終決定します。その後口腔衛生管理の状況やリハビリの進捗状況、喫食状況の変化を観察し、食事形態の変更や、摂食嚥下機能の精査、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査の実施等を行っていきます。これらの活動は、医師・歯科医師協働でおこなわれます。さらに自宅等へ退院できなかった患者さんは長期療養を目的とした病棟へ移り、そこでも同様に経過が観察されます。特に歯科医師は、ミールラウンドをおこなって患者さんの状況を常時モニタリングするとともに、看護師・リハスタッフ・管理栄養士・ケアマネジャーとともに、カンファレンスを実施し、喫食状況の変化に対応するようにします。

 これらの取り組みの結果、病院の方針として「できる限り最後まで経口摂取できるようにする」という目標を打ち立てることができ、全職員がその実現に向けて取り組むようになりました。今回のシンポジュウムでは病院歯科の一例として紹介させて頂きます。