[SY7-4] ECMOセンターにおける摂食嚥下リハビリテーションの経験
【略歴】
1997年3月 九州大学歯学部歯学科 卒業
1997年4月 九州大学歯学部歯科補綴学第二講座 入局
1999年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 助手
2007年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 講師
2019年1月 福岡大学病院摂食嚥下センター センター長
2019年4月 福岡大学病院歯科口腔外科 准教授(兼務)
1997年3月 九州大学歯学部歯学科 卒業
1997年4月 九州大学歯学部歯科補綴学第二講座 入局
1999年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 助手
2007年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 講師
2019年1月 福岡大学病院摂食嚥下センター センター長
2019年4月 福岡大学病院歯科口腔外科 准教授(兼務)
2020年7月1日、福岡大学病院は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の重症患者に対し人工心肺装置を運用する「ECMOセンター」を開設した。ECMOは従来の呼吸管理治療に抵抗性の重症呼吸不全例に対し、膜型人工肺を用いた体外循環で一時的に呼吸循環補助を行い、その間に機能障害に陥った生体肺の回復を待ち、生命を維持する方法である。呼吸補助を目的としてVV-ECMOを導入する場合が多い。
日本嚥下医学会によるCOVID-19流行期における嚥下障害診療指針は、COVID-19感染患者に対しては、できる限り感染性が否定されるまでエアロゾルを発生しうる嚥下機能評価を延期すべきとしている。必要性が高い場合はフル装備の個人防護具(full-PPE)の装着を推奨している。当院摂食嚥下センターは、学会指針に基づき、院内感染のリスクを極力回避するためECMOセンターへの立ち入りを控えてきた。しかし、当院感染制御部により院内感染対策基準が見直され、ECMO患者に対する摂食嚥下リハビリテーションを経験するようになったため、若干の考察を加えて報告する。
【症例1】69歳、男性。当院救命救急センター転院当日にVV-ECMOを導入した。ECMO導入下での経口摂取を検討するため、入院16病日目にfull-PPE装着にてスクリーニング検査を行った。飲水テストにて着色水5mLの一部がサイドチューブから吸引された。そこで、救命救急センター配属の摂食嚥下障害認定看護師にとろみ水とゼリーを用いた直接訓練を依頼した。
【症例2】59歳、男性。当院救命救急センター転院翌日、VV-ECMOを導入した。PCR検査で3回目の陰性が確認されたため、入院64病日にECMO導入下でCOVID-19対応病棟から別棟の個室に移動した。入院79病日目に標準PPEに眼と⾝体の保護を加えたEB-PPE装着にて嚥下内視鏡(VE)検査を行った。初回VEでは唾液の咽頭貯留を認めたが、摂食嚥下障害認定看護師による間接訓練を経て、2回目のVEでは水分やゼリーを問題なく嚥下できた。入院93病日目にミキサー食を開始し、ソフト食まで調整した。しかし、入院104病日、左気胸を認め、経口での分離肺換気に変更となり、経口摂取は中止となった。
【症例3】64歳、女性。原因不明の肺炎と急性呼吸窮迫症候群に対し当院救命救急センター転院当日にVV-ECMOを導入した。しかし、PCR検査は陰性であったため入院時より隔離されなかった。入院8病日目に標準PPE装着にてVE検査を行い、歯科衛生士によるゼリーを用いた直接訓練を開始した。入院64病日目にソフト食を開始、五分粥食まで調整した。しかし、ECMO離脱に複数回失敗し、一時は呼吸不全が不可逆的である終末期と判断された。その後、急速に肺野の透過性が改善し、ECMO離脱に成功、転院となった。
日本嚥下医学会によるCOVID-19流行期における嚥下障害診療指針は、COVID-19感染患者に対しては、できる限り感染性が否定されるまでエアロゾルを発生しうる嚥下機能評価を延期すべきとしている。必要性が高い場合はフル装備の個人防護具(full-PPE)の装着を推奨している。当院摂食嚥下センターは、学会指針に基づき、院内感染のリスクを極力回避するためECMOセンターへの立ち入りを控えてきた。しかし、当院感染制御部により院内感染対策基準が見直され、ECMO患者に対する摂食嚥下リハビリテーションを経験するようになったため、若干の考察を加えて報告する。
【症例1】69歳、男性。当院救命救急センター転院当日にVV-ECMOを導入した。ECMO導入下での経口摂取を検討するため、入院16病日目にfull-PPE装着にてスクリーニング検査を行った。飲水テストにて着色水5mLの一部がサイドチューブから吸引された。そこで、救命救急センター配属の摂食嚥下障害認定看護師にとろみ水とゼリーを用いた直接訓練を依頼した。
【症例2】59歳、男性。当院救命救急センター転院翌日、VV-ECMOを導入した。PCR検査で3回目の陰性が確認されたため、入院64病日にECMO導入下でCOVID-19対応病棟から別棟の個室に移動した。入院79病日目に標準PPEに眼と⾝体の保護を加えたEB-PPE装着にて嚥下内視鏡(VE)検査を行った。初回VEでは唾液の咽頭貯留を認めたが、摂食嚥下障害認定看護師による間接訓練を経て、2回目のVEでは水分やゼリーを問題なく嚥下できた。入院93病日目にミキサー食を開始し、ソフト食まで調整した。しかし、入院104病日、左気胸を認め、経口での分離肺換気に変更となり、経口摂取は中止となった。
【症例3】64歳、女性。原因不明の肺炎と急性呼吸窮迫症候群に対し当院救命救急センター転院当日にVV-ECMOを導入した。しかし、PCR検査は陰性であったため入院時より隔離されなかった。入院8病日目に標準PPE装着にてVE検査を行い、歯科衛生士によるゼリーを用いた直接訓練を開始した。入院64病日目にソフト食を開始、五分粥食まで調整した。しかし、ECMO離脱に複数回失敗し、一時は呼吸不全が不可逆的である終末期と判断された。その後、急速に肺野の透過性が改善し、ECMO離脱に成功、転院となった。