一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター1

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター1 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-02] 肺癌診断後のADL低下により外来診療から歯科訪問診療に移行した症例

○小宮山 貴将、服部 佳功 (東北大学大学院 歯学研究科 リハビリテーション歯学講座加齢歯科学分野)

【緒言】
 がん患者は,その早期や中期においては比較的ADLが保たれることが多い。一方,がん終末期において, ADLは著しく低下すると考えられている。がん終末期患者の歯科治療を行う際は,急激に変化するADLを考慮する必要がある。われわれは,肺癌進行に伴うADLの低下により外来診療から歯科訪問診療に移行した一例を経験したので報告する。

【症例】
 82歳,男性。床下粘膜の疼痛および義歯脱落による咀嚼困難を主訴に来院した。既往歴はCOPDである。近医歯科にて上下顎全部床義歯を繰り返し作製したが,粘膜の疼痛および義歯の脱落が改善しなかった。口腔内は, 前歯部に著明なフラビーガムを有する上顎無歯顎,下顎が右下3番および左下1,2,4番が残根であった。口腔機能検査の結果,舌圧,咬合力,オーラルディアドコキネシス,嚥下機能に低下を認めた。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【経過】
 当初は外来にて義歯調整や,並行して残根部の抜去を行った。その後,右側頬粘膜および舌体部の白色病変や床下粘膜全体に対しての疼痛が認められ,口腔カンジダ症と診断した。それらの症状が寛解したのち,最終義歯である上下顎全部床義歯を作製する途中で,体調不良のため入院し,肺癌と診断された。肺癌への対応は,有効な治療法なくBSCの方針となった。退院直後は著明なADL低下を認めず外来診療を継続したが,経過とともに歩行困難,ユニット移乗困難,治療前の疲労感や頻繁の下痢を認めるようになり,診療中に従命困難となる場面も散見された。在宅医師と相談の上,新義歯装着直後より診療の場を居宅に切り替えて,切れ目なく義歯調整などの口腔健康管理を継続した。歯科訪問診療時は疲労感を認めず,歩行などのADLも外来診療時と比較して向上していた。

【考察】
 本症例は,がん終末期に起こる急激なADLの低下に対して,診療の場所を生活の場へ切り替えることで対応した。在宅歯科医療の受療は,療養高齢者にとって身体的な負担が少ないことが示された。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)