[認定P-04] アルツハイマー型認知症後期患者の口腔ケアと摂食嚥下指導
【緒言】
アルツハイマー型認知症は認知症の中の半数を占めていると言われている。脳のアミロイドβやタウタンパクが異常にたまり,それに伴い脳細胞が損傷したり,神経伝達物質が減少して,脳全体が萎縮することで引き起こされると考えられている。今回,アルツハイマー型認知症後期患者の口腔ケアと摂食嚥下指導を経験したので報告する。
【症例】
既往歴はアルツハイマー型認知症患者,初診時の身長150cm,体重42kgであった。口腔内は多数の齲蝕と口腔乾燥がみられた。患者の家族の希望で積極的な歯科治療は行わないこととした。なお,本報告の発表について患者の代諾者(患者の夫)から文書による同意を得ている。
【経過】
2013年6月より口腔ケアを希望し,月1回当センター障がい者歯科に通院していた。認知症の進行とともに食事動作ができなくなり,2017年より胃ろうとなった。主にラコールで栄養をとっている。以前はゼリー飲料を飲ませていたが,むせがみられるようになり,誤嚥性肺炎を罹患して入院後は経口摂取はなしであった。夫の希望は甘い物が好きだったので,楽しみ程度に何か食べさせたいとのことだった。2020年10月のVE検査時は,身長150cm,体重35kg,BMI15.6であった。生活は昼夜逆転していることが多く,身体の拘縮も認めた。摂食時にはヘッドレストが必要であった。VE所見は,エンゲリードを3口食べ,咽頭に貯留すると嚥下運動がみられた。嚥下反射はあるが,唾液は少なく口腔運動の低下は著明であった。痰・分泌物の喀出は可能であった。1日1回5口程度(楽しみレベル)の経口摂取の継続を指示した。2021年12月現在,口腔ケアを中心に対応している。
【考察】
今回,アルツハイマー型認知症の胃ろうを伴った摂食嚥下障害の患者を経験した。夫の希望でVE検査を行い, 嚥下反射の遅延を認めた。口腔ケア中にもむせがみられたりしていたが,嚥下反射は残存していた。経口摂取がない期間があったため,全体に廃用萎縮による嚥下機能の低下が顕著であった。ただし,唾液嚥下も含めて,嚥下機能は維持できるような取り組みが必要と考える。介助者である夫は経口摂取をさせたいが,肺炎での入院歴があるためむせに対して敏感であった。本人の体調や夫の希望も含め,無理のない範囲での摂食指導が継続できるとよいと考える。(COI開示:なし)倫理審査対象外
アルツハイマー型認知症は認知症の中の半数を占めていると言われている。脳のアミロイドβやタウタンパクが異常にたまり,それに伴い脳細胞が損傷したり,神経伝達物質が減少して,脳全体が萎縮することで引き起こされると考えられている。今回,アルツハイマー型認知症後期患者の口腔ケアと摂食嚥下指導を経験したので報告する。
【症例】
既往歴はアルツハイマー型認知症患者,初診時の身長150cm,体重42kgであった。口腔内は多数の齲蝕と口腔乾燥がみられた。患者の家族の希望で積極的な歯科治療は行わないこととした。なお,本報告の発表について患者の代諾者(患者の夫)から文書による同意を得ている。
【経過】
2013年6月より口腔ケアを希望し,月1回当センター障がい者歯科に通院していた。認知症の進行とともに食事動作ができなくなり,2017年より胃ろうとなった。主にラコールで栄養をとっている。以前はゼリー飲料を飲ませていたが,むせがみられるようになり,誤嚥性肺炎を罹患して入院後は経口摂取はなしであった。夫の希望は甘い物が好きだったので,楽しみ程度に何か食べさせたいとのことだった。2020年10月のVE検査時は,身長150cm,体重35kg,BMI15.6であった。生活は昼夜逆転していることが多く,身体の拘縮も認めた。摂食時にはヘッドレストが必要であった。VE所見は,エンゲリードを3口食べ,咽頭に貯留すると嚥下運動がみられた。嚥下反射はあるが,唾液は少なく口腔運動の低下は著明であった。痰・分泌物の喀出は可能であった。1日1回5口程度(楽しみレベル)の経口摂取の継続を指示した。2021年12月現在,口腔ケアを中心に対応している。
【考察】
今回,アルツハイマー型認知症の胃ろうを伴った摂食嚥下障害の患者を経験した。夫の希望でVE検査を行い, 嚥下反射の遅延を認めた。口腔ケア中にもむせがみられたりしていたが,嚥下反射は残存していた。経口摂取がない期間があったため,全体に廃用萎縮による嚥下機能の低下が顕著であった。ただし,唾液嚥下も含めて,嚥下機能は維持できるような取り組みが必要と考える。介助者である夫は経口摂取をさせたいが,肺炎での入院歴があるためむせに対して敏感であった。本人の体調や夫の希望も含め,無理のない範囲での摂食指導が継続できるとよいと考える。(COI開示:なし)倫理審査対象外