一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター1

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター1 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-05] 脳梗塞後遺症があり口腔内悪化した症例に対する居宅往診での口腔ケアと口腔嚥下体操を継続的に実施した症例

○今井 裕子、小向井 英記 (医療法人 小向井歯科クリニック)

【目的】
 脳梗塞などの後遺症から口腔機能、嚥下能力の低下を認めることが多い。そのような症例に対し嚥下体操を施行することは、嚥下機能の改善、誤嚥性肺炎の防止に効果があることが知られている。
我々は、脳梗塞後遺症の患者に対して居宅往診で口腔ケアと口腔嚥下体操を継続的に実施した一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 69歳、女性。
既往歴:原発性高リン脂質抗体症候群、左側後頭葉脳梗塞、脳血管性認知症
歩行困難、四肢麻痺を生じ全身的な筋の拘縮も認め口腔清掃は全介助。認知症により意思疎通が困難で、介護者の口腔清掃不十分になりやすく誤嚥性肺炎のリスクがあった。嚥下機能低下にて食塊が形成できず口腔内残存による食事時間の延長を認めていた。
2020/11/9 初診。右下13に対して、う蝕治療施行。
口腔乾燥と舌苔の付着あり、プラークコントロール不良。口腔内清掃状態、義歯装着状態のチェックをした。
2020/12/21 口腔ケア実施。歯肉炎症を認め、ブラッシングで歯肉出血多量であった。歯ブラシ、歯間ブラシによる口腔清掃、スポンジブラシでの口腔粘膜清掃、歯肉マッサージを施行。
2021/ 2/15 口腔ケアに加えて、口腔嚥下体操、唾液腺マッサージを施行。歯肉腫脹はやや改善、プラーク付着は多量であった。
同年3~6月にかけて月1回口腔ケア及び口腔嚥下体操を継続し、プラークコントロールは改善傾向であり歯肉腫脹、出血も改善傾向となった。
7~12月にも同処置を継続し、更に歯肉腫脹は軽減し歯肉出血もほぼ消失。唾液腺マッサージの継続にて口腔乾燥も改善した。
2022年1月 低栄養からの体力減弱にて、かかりつけ医の判断で胃瘻造設。
現在1ヶ月毎にメインテナンスを継続している。
なお、本報告の発表について、患者の家族から文書による同意を得ている。
【結果と考察】
 口腔ケア、口腔嚥下体操、唾液腺マッサージの継続により、誤嚥性肺炎の罹患を予防することができたと考える。嚥下機能の改善も認められ、安全な食環境を整備できた。口腔嚥下体操の継続的な実施は、唾液分泌量の増加や嚥下機能の回復に効果があると穴井らの研究でも示唆されており、この症例においても効果があったと考える。
食事量低下より胃瘻になったが、経口摂取の継続のために食事状況を観察し原因を追究して対応を模索する必要があった。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)