一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター1

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター1 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-06] 認知症高齢者に発生した褥瘡に対して,姿勢と栄養の改善,義歯製作,摂食機能療法を多職種にて行った症例

○尾野 雄大、小金澤 一美 (医療法人白櫻会小金沢歯科診療所)

【緒言】
寝たきり高齢者における褥瘡は全身状態の悪化を招く。栄養状態は褥瘡治癒に影響を与える。今回,認知症の寝たきり高齢者に発生した仙骨部の褥瘡に対して,歯科医師,管理栄養士,リハビリ職,看護師,介護職員との多職種協働により褥瘡治癒に至った症例を経験したので,報告する。
【症例および経過】
80歳,女性。日常生活自立度はC1,Ⅳ。左半身の麻痺と拘縮,頸部の拘縮を認める。2021年3月仙骨部の褥瘡に生理食塩水による洗浄とゲーベンクリーム,ユーパスタを塗布し,ポリウレタンフィルムにて保護を行い, 夜間2時間ごとの体位交換とエアーマットによる除圧を行ったが悪化傾向にあると施設職員より報告を受けた。褥瘡発生時の食事形態はトロミ付き全粥,ミキサー食を車椅子座位,全介助にて摂取していた。報告を受け,摂食状況と献立の確認,口腔機能の評価を行った。栄養状態の評価の結果,患者のBMIは17,摂取カロリーは815kcal/日,摂取タンパク質は35g/日,血清総蛋白は5.9g/dlと低値のため,摂取カロリーの目標値を1550kcalとし,食事へのタンパク質5.0g/日を追加した。また,座位での体幹の左傾斜,仙骨部への過圧が認められたため,体位変換クッション等で骨盤の偏位を補正し姿勢の改善を行った。口腔機能評価の結果,口唇閉鎖良好,舌の左半側運動麻痺,下顎左臼歯部欠損,嚥下時のムセや咽頭雑音はみられなかった。同年4月左側臼歯部に部分床義歯を装着し,咀嚼運動が認められたため食形態を軟飯,きざみ食へと変更した。同年6月褥瘡は治癒, 7月の血清総蛋白は6.5g/dlと改善,現在再発防止に努めている。なお、本症例の発表において患者家族よりの同意を得ている。
【考察】
褥瘡発生時の食形態は全粥,ミキサー食であった。全粥は米飯との比較において,米の量に対して水分量が2.5倍必要であるため、相対的に水分量が多く摂取カロリー不足が懸念される。義歯作製による口腔機能のリハビリテーションと栄養状態の改善を継続した結果,褥瘡は治癒に至ったため,褥瘡に対する歯科の介入は重要な要素であると思われる。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)