The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター2

Fri. Jun 10, 2022 3:15 PM - 4:45 PM 認定医審査ポスター2 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-07] 脳卒中発症後,長期経過した高齢患者の摂食嚥下障害に対し,摂食嚥下リハビリテーションを行った1症例

○尾田 友紀1、吉川 峰加2 (1. 広島大学病院障害者歯科、2. 広島大学大学院医系科学研究科 先端歯科補綴学研究室)

【緒言】
脳卒中発症後の急性期では,医学的治療が最優先されるが,誤嚥性肺炎の予防や口腔機能の廃用予防を目的としたリハビリテーションも同時期に可及的速やかに開始することが望ましいとされる1) 。しかし,介入されることなく長期経過した患者も少なくない。われわれは,脳卒中発症後16年が経過し,摂食嚥下障害が徐々に悪化した患者に対し,摂食嚥下リハビリテーションを行ったので報告する。

【症例】
80歳,男性。飲み込みの練習を主訴に来院した。
既往歴:1998年に左脳梗塞発症。以降,右片麻痺,高次脳機能障害  
現病歴:摂食嚥下障害
現症:(全身所見)身長:172cm,体重:60kg。車椅子。重度の開鼻音ながら会話の聴取は可能であった。
         意識清明であるが,従命は不確実。主な介護者は妻。
   (口腔内所見)歯周炎は軽度。開口量3横指。舌は運動時右方に偏位。軟口蓋運動不十分。
なお,本報告の発表について患者本人および家族から文書による同意を得ている。

【経過】
62歳時に脳卒中を発症した。総合病院にて急性期を過ごした後自宅にて療養。初診6ヵ月前からむせが頻回となり, 誤嚥性肺炎を発症したため,嚥下の精査を家族が希望した。初診時,食事は経口で普通食(EAT10スコア17点),食事中のむせは頻回で,随意的な咳は可能であった。訓練開始後10ヵ月間は,訓練を実施可能で,嚥下機能も現状を維持できていたが,11カ月目の大腿骨骨折により,訓練が途絶えた。17ヵ月後の再評価の結果,栄養の全量経口摂取は困難と判断された。本人と家族は代替栄養を希望せず,現在も自宅で日々リハビリテーショ ンを継続している。

【考察】
本症例では,家族はリハビリテーションに対する理解が良好で,姿勢の保持や舌の訓練等を継続して行い得た。 その際,継続可能な訓練法を見極め,患者と家族の負担を増やさないよう配慮した。
訓練開始後6カ月で,舌圧測定が可能となるなど一定の成果が出ていたが,大腿骨骨折加療のための入院を契機に,認知機能が急速に低下した。脳卒中ターミナル期のリハビリテーションの限界に対し,その判断の重要性について考えさせられた。

(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
1) 栗原正紀.日本リハビリテーション病院・施設協会,口腔リハビリテーション推進委員会編:医科歯科連携実践マニュアル.三輪書店,東京,2-6,2014.