[認定P-11] 軟口蓋リンパ腫術後の患者に対し栓塞子により構音障害および摂食嚥下障害の改善を認めた1症例
【緒言】
構音障害と摂食嚥下障害を認める頭頸部領域の悪性腫瘍術後の患者に対して,栓塞子を製作し,良好な結果を得た一例を経験したので報告する。
【症例】
84歳,男性。嚥下痛を主訴に腫瘍血液内科を受診し,軟口蓋リンパ腫と診断され,抗がん剤治療を受けた。治療経過は良好であったが,軟口蓋および硬口蓋後方の欠損により構音障害と摂食嚥下障害を認めたため当科の受診に至った。
【経過】
初診時の問診では,開鼻声のため家族との会話を途中で諦めることがよくあるとのことだった。嚥下内視鏡検査,嚥下造影検査(以下,VE,VF)より食塊移送不良,鼻咽腔逆流,嚥下後の咽頭内残留を認めた。そのため, 頭部後屈位で食塊を移送し,鼻をつまんで頭部前屈位で舌を後方に引きながら嚥下するよう指導したところ,これらの症状に改善を認めた。さらに,体重減少に対して栄養補助食品を摂取するよう指導を行った。構音不明瞭を訴えるために栓塞子を製作することとした。欠損部位の栓塞子の形態は粘膜調整材を添加しながら製作し,必要に応じてVEやVFで視覚化しながら調整を行った。形態が安定したところで粘膜調整材を義歯床用硬質裏装材に置き換えた。装置を装着することで発音が明瞭になり会話が途切れることが減少した。当初は鼻をつまんでも4ml以上の水分は鼻咽腔逆流していたが、鼻をつままず装置のみで8ml以上の水分が嚥下可能となった。嚥下時の圧力が鼻腔へ抜けなくなったことで咽頭残留量が減少し,食事時間の短縮や食事摂取量の増加に繋がった。
【考察】
本症例は,軟口蓋リンパ腫の治療の後遺症により軟口蓋と硬口蓋後方が欠損し,構音障害および摂食嚥下障害を認めたが,嚥下方法の指導や栓塞子の装着が有効であったと考えられる。構音障害の改善により家族や電話越しの友人との会話が円滑になり前向きな気持ちに変化した。また,摂食嚥下機能の改善により食事時間の短縮と摂取量が増加し,体重が増えることで体力の回復に繋がった。術者の技量に合わせ論文などを参考にして,経験者と症例検討を繰り返しながら顎義歯製作したことは意義のあることであった。
(本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。)
(COI開示:なし) (倫理審査対象外)
構音障害と摂食嚥下障害を認める頭頸部領域の悪性腫瘍術後の患者に対して,栓塞子を製作し,良好な結果を得た一例を経験したので報告する。
【症例】
84歳,男性。嚥下痛を主訴に腫瘍血液内科を受診し,軟口蓋リンパ腫と診断され,抗がん剤治療を受けた。治療経過は良好であったが,軟口蓋および硬口蓋後方の欠損により構音障害と摂食嚥下障害を認めたため当科の受診に至った。
【経過】
初診時の問診では,開鼻声のため家族との会話を途中で諦めることがよくあるとのことだった。嚥下内視鏡検査,嚥下造影検査(以下,VE,VF)より食塊移送不良,鼻咽腔逆流,嚥下後の咽頭内残留を認めた。そのため, 頭部後屈位で食塊を移送し,鼻をつまんで頭部前屈位で舌を後方に引きながら嚥下するよう指導したところ,これらの症状に改善を認めた。さらに,体重減少に対して栄養補助食品を摂取するよう指導を行った。構音不明瞭を訴えるために栓塞子を製作することとした。欠損部位の栓塞子の形態は粘膜調整材を添加しながら製作し,必要に応じてVEやVFで視覚化しながら調整を行った。形態が安定したところで粘膜調整材を義歯床用硬質裏装材に置き換えた。装置を装着することで発音が明瞭になり会話が途切れることが減少した。当初は鼻をつまんでも4ml以上の水分は鼻咽腔逆流していたが、鼻をつままず装置のみで8ml以上の水分が嚥下可能となった。嚥下時の圧力が鼻腔へ抜けなくなったことで咽頭残留量が減少し,食事時間の短縮や食事摂取量の増加に繋がった。
【考察】
本症例は,軟口蓋リンパ腫の治療の後遺症により軟口蓋と硬口蓋後方が欠損し,構音障害および摂食嚥下障害を認めたが,嚥下方法の指導や栓塞子の装着が有効であったと考えられる。構音障害の改善により家族や電話越しの友人との会話が円滑になり前向きな気持ちに変化した。また,摂食嚥下機能の改善により食事時間の短縮と摂取量が増加し,体重が増えることで体力の回復に繋がった。術者の技量に合わせ論文などを参考にして,経験者と症例検討を繰り返しながら顎義歯製作したことは意義のあることであった。
(本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。)
(COI開示:なし) (倫理審査対象外)