一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター3

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター3 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-13] 高次脳機能障害を伴うパーキンソン症候群患者に対し管理栄養士と協働して摂食機能療法を行った一例

○加藤 陽子1、菊谷 武1,2 (1. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学、2. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)

【緒言】
 高次脳機能障害を有する患者では, 理解力の欠如や遂行機能障害, 固執性や意欲・発動性の低下による摂取意欲低下をきたすことがある。われわれは, 高次脳機能障害を伴うパーキンソン症候群患者に対し管理栄養士と協働して摂食機能療法を行った一例を経験したので報告する。
【症例】
 80 歳, 男性。食事時のムセなどを妻に指摘され来院した。既往歴はパーキンソン症候群, 胆嚢炎, 前立腺肥大, 高血圧, 高次脳機能障害であった。Barthel Index 85 点, Lowton Index 3 点。常食およびとろみなし水分を 90 分かけて摂取していた。MNA-SF は 11 点で, 栄養評価では一日あたり 200kcal 程度が不足していた。アイヒナー分類 C-1 で義歯使用し, 口腔衛生状態は不良であった。口腔機能検査では 7 項目中 6 項目が該当し, EAT-10 のスコアは 0 点であった。嚥下造影検査において嚥下反射惹起遅延, 固形物の咽頭残留を認め, 藤島 Gr.7, DSS3 と診断した。なお, 本報告の発表について代諾者である妻から文書による同意を得ている。
【経過】
 検査結果から, 水分のとろみづけや食形態の変更, 複数回嚥下または交互嚥下, 食具の変更, 高エネルギー栄養補助食品の導入を指導した。主治医への対診のもと抗パーキンソン病薬の服薬を食前に変更した。コロナ感染拡大中のオンライン診療を含め, 毎回管理栄養士同席のもと指導を行った。介入翌月は一時的に食事時間の短縮や体重の微増がみられたが, 病状の理解困難や, 味や形態へのこだわりによる摂食意欲の低下により指導した食事内容が継続的には実施されず, 介入後 3 か月目からは体重は-1 ㎏/月ペースで減少し続けた。服薬時間変更の効果は限定的であった。頻繁な介入により患者が受け入れ可能な方法を指導し続け, 介入後 1 年6か月目, 摂食嚥下機能の増悪による顕著な自覚症状に伴い, 補食を継続摂取し始めた。しかし, 介入後 1 年 8 か月目には初診時から 17 ㎏減少し 46.5 ㎏となった。筋肉量は 1 年 4 か月目から 36 ㎏台で推移している。
【考察】
 本症例では, 高次脳機能障害によると思われる理解力欠如やこだわりにより, 対応に難渋した。管理栄養士と協働したことで補食の種類の変更や, 通常の食事の範囲内でエネルギーやタンパク質の摂取量を増加させる方法など, 様々な提案が可能となり, 多職種連携の重要性が強調された。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)