一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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認定医審査ポスター3

2022年6月10日(金) 15:15 〜 16:45 認定医審査ポスター3 (りゅーとぴあ 2F スタジオAホワイエ)

[認定P-14] 脳血管疾患後の認知症高齢患者への介入により、経口摂取再開およびADL改善を認めた一例

○市川 陽子1,2、菊谷 武2,3 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション科、2. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、3. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)

【緒言】
脳血管疾患患者の退院後の社会的サポートは,患者の機能回復にも関連するとの報告がある。今回,家族により質の高い介護が提供され,また多職種で連携することによって,経口摂取を再開し,ADL改善を認めた一例を経験したので報告する。
【症例】
93歳,女性。患者家族より経口摂取再開を希望し,在宅訪問診療の依頼があった。初診より3年前に脳梗塞の既往があり,2ヵ月前に脳梗塞疑いで入院した。入院中にアテローム性血栓性脳梗塞を発症し,右片麻痺,失語症が出現した。胃瘻造設後,退院し,初診時は経管栄養のみの状態(FILS 1)であった。外部観察評価にて,右顔面神経領域に不全麻痺を認めた。食物認知は不良で,捕食に数秒要した。嚥下内視鏡検査にて,口腔咽頭移送時間の延長と嚥下反射惹起遅延および耐久性の低下を認めた。
【経過】
臨床的重症度分類3;水分誤嚥と診断した。問題点とその対応として,覚醒状態にむらがあることに対し,車椅子に移乗する時間を増やし日中リズムを整えるよう指導した。口腔咽頭移送時間延長に対しては,姿勢調整を行い, 廃用による筋力低下に対しては,多職種で連携し座位保持訓練を行い廃用の改善を行った。リクライニング45度にて,食形態は,嚥下調整食学会分類 2021のコード0jで経口摂取を開始した。当初はためこみや疲れがみられたが,口腔咽頭移送時間も徐々に短縮し,座位でも摂取できるようになった。初診より3ヵ月半後に,コード3相当の食品の摂取が可能となり,初診5ヵ月後には体重が3.4kg増加した。初診6ヵ月半後には500kcal/dayを経口摂取可能となり,FILS 5となった。なお,初診4ヵ月後よりPTが介入し,現在ではADLの改善がみられ,端座位保持が可能となり,訓練時に立位も可能となった。摂食時の動作としては一部自己摂取が可能となった。
【考察】
多職種で情報共有し介入できたこと,および家族の介護力が高いことが全身的改善の一助となった。日中リズムを整え,覚醒状態を改善させることで,食物認知が改善し,口腔咽頭移送時間を短縮させることができた。また, 訪問時に摂食嚥下機能評価を行い,食形態を段階的に提案した結果,経口摂取量の増加につながったと考えられた。
なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
(倫理審査対象外)
(COI開示:なし)